日本の多くの会社では仕事に慣れていないメンバー、異動したての同僚がいたら、周囲がそれを助けてくれる土壌がある。これがジョブ型になると、そういう手助けは「評価」の数字に反映されない行為になっていく。周りの人は、他所の人。手を差し伸べてもカウントされない。
米国企業では自分のことが中心で、周りには干渉しないカルチャーが定着している。個人主義で自己責任と言えば聞こえはいいが、「困ったときにお互いが支え合う」という精神が欠陥しているのではないか。
東日本の大震災、阪神・淡路大震災のとき、日本人は欧州や米国の国と比べて秩序正しく、助け合えた。あれは国民性だと書く新聞もあったが、私はそれだけではなく「メンバーシップ型雇用」と「終身雇用制」が影響していると思っている。
自分が会社という共同体に所属しているという当事者意識と、その会社や社会全体が自分を守ってくれるという安心感。だから、自然と周囲を助ける感覚を持ち続けていられる。
もし、ジョブ型が当たり前の労働環境に日本が移行した後、10年くらい経って大震災が起きたら、「自分さえよければよい」という行動を取る人が増えるかもしれない。国民の行動様式も、伝統的な日本型がつねに継承されるのではなく、企業が取り入れる文化とともにその在り方が変わっていく。
小さな子どもが転びそうになったとき手をパッと差し出すのも、隣で困っている人に「大丈夫?」と声をかけるのも、競い合いながら成長してきた同業他社に連帯感を抱くのも、家族とチョコレートを分け合うのも、経済学で扱う「価値」やビジネススクールが教える「数値化」とは無関係の大切な感覚だ。
私はひとり占めして勝ち残るよりも、分け合いながら皆で豊かになる社会に愛着がある。色とりどりのチョコレートはみんなで分けて食べたい。ひとり占めして、誇らしげにする。そんな人が勝者になる世界は息苦しい。
力のある人、お金のある人、声の大きな人が人々から奪い、さらに強くなっていくのを見ながらどこかおかしい……と思っている人に「誠実な仕事とは何か?」を問い直す。
悩んだとき、葛藤したとき、苦しいときに、自分を「誠実な世界」にとどめるための“11の自問”
世界中の財界人から尊敬を集めるシリコンバレー最高峰の日本人事業家である著者が、死ぬときに後悔しない「最高の仕事を生きる」ために魂を込めた1冊です。
1952年大阪府生まれ。慶應義塾大学法学部在学中から中米考古学を研究。27歳でスタンフォード大学経営大学院MBA課程に入学。その後、工学部大学院に転籍。在学中にシリコンバレーで光ファイバーディスプレイ開発メーカーを創業。1984年デフタ・パートナーズを創業し、ソフトウエア、情報通信、半導体技術、バイオ、創薬等のベンチャー企業やベンチャーキャピタルに出資、経営を行う。国内でも大阪にデータコントロール社を創業し、社長に就任。1990年代には自身がパートナーを務めるアクセル・パートナーズが全米第2位のベンチャーキャピタルとなり、シリコンバレーを代表するベンチャーキャピタリストとなる。
1985年にスタンフォードで設立したアライアンス・フォーラム財団は現在、国連経済社会理事会の特別協議資格を有する米合衆国非政府機関となり「世界中に健康で教育を受けた豊かな中間層を生むこと」を目的とした活動を40年間にわたり続けている。並行して各国の大統領顧問や国際機関大使等を歴任。日本では、財務省参与(2005〜2009年)、内閣府本府参与(2013〜2020年)、経済財政諮問会議専門調査会会長代理、法務省危機管理会社法制会議議長などを務める。大阪大学、大阪市立大学、香港中文大学、香港理工大学等の医学部や工学部で教授職を歴任した。著書に『新しい資本主義』『増補 21世紀の国富論』『「公益」資本主義』などがある。
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