タイトなスケジュールの中、特に苦労したのは機体の色の選定やUIの設計だったという。機体の色は、シンプルなものが良いのか、目立つ色が良いのか。多くの人にとって、使いやすいUIとは何かを模索した。
ショートストーリーを印刷する紙は感熱紙(レジで使うロール紙)を活用し、補充の手間を軽減した。限られた半年間で、設置先の開拓と機体の開発を並行して進めた。
さらに、本の一部を抜粋するため、出版社や著者から許諾を得る必要があった。取次としてのネットワークを生かしながらも、丁寧な説明を重ねたという。
2026年2月時点で、物語は約8500枚印刷された。当初目標の1000枚を大きく上回る数字だ。利用者アンケートでは、9割以上が「また使ってみたい」と回答した。
「街中で無料で本が出てくるのが面白い」「新しい作家との出合いになった」といった声が寄せられた。本の“全部”ではなく“一部”を切り取ることで、読書体験のハードルを下げる狙いが功を奏した。他地域からの問い合わせも、寄せられているという。
生成AIで物語を作れる時代だが、アンケートでは「作者が誰かを重視する読者が多い」という結果も出ている。あえて出版社を通した正規作品にこだわることで、著者からもSNSで賛同の声が上がるなど、さまざまな広がりも見せている。
実証実験は、2027年2月ごろまで継続予定。設置件数を増やし、地域の歴史や観光資源と結び付けた企画も検討しているという。単なる販促ではなく、街の中に“読書のきっかけ”を埋め込むインフラへと育てていく構想だ。
本離れという逆風の中で生まれた、若手社員発の挑戦。物語の自動販売機は、ページを開く最初の一歩をどこまで広げられるのか。今後の展開にも注目したい。
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