もちろん、コーナンにとってのメリットも大きい。アレンザHDの店舗網を統合できればトップシェアが確保できる。また、既存HCの集客力が大幅に向上し、手薄だった中部圏の強化により3大都市圏でのトップシェアを確立できるのだ。これはコーナンの競争力向上にも直結する。
これまでDCMは数多くのM&Aを実施したものの、カインズの単独での成長力が高く、数年するとトップを奪われてきた。市場が縮小する地方都市では、買収後の成長が難しかったからだ。
しかしコーナンの場合、今回のTOBにより市場縮小の懸念がほとんどない3大都市圏を押さえたことに加え、プロ向けという成長業態を確立しているため、成長性では負けない可能性がある。コーナンのHC事業の売り上げはこの10年で800億円ほど増えており、プロ向け事業の売り上げが1000億円以上伸びているため、カインズやDCMとの差を徐々に縮めることができた(図表4)。プロ向けの業態はリフォーム業者向けが中心で、大都市周辺に豊富なニーズがあるため、大都市を基盤とするコーナンには今後も十分な成長余地がある。
コーナンにとって何よりありがたいのは、バローの「生鮮強化型戦略店舗」が業界屈指の集客力を持っていることが、京阪神や首都圏ですでに証明されていることであろう。バローの鮮魚売り場の対面販売は特に人気を集めており、業界トップクラスのロピアやオーケー並みの集客力がある。
そもそもHCの店舗は売り場効率が悪く、特に出店コストが高い大都市圏では、スーパーに少しでも売り場を譲った方が売り上げ効率が上がるのだ。大阪や横浜でもバローの人気はすさまじく、コーナンは最も優れた集客エンジンをパートナーに取り込んだことになる。
相互にメリットがあるコーナンとバローの組み合わせだが、特にバローにとっては、足元の環境変化を踏まえるとさらに大きな利点がある。近年の建築コストの高騰により、大都市圏における小売りチェーンの投資効率は悪化している。新規出店は以前よりはるかに難しくなっており、成長スピードで競合に勝つためには、居抜きでの出店が現実的な選択肢となる。そうした中で、コーナンの既存店への出店優先権をバローが得た意義は、これまで以上に大きい。
コーナンによるアレンザHDのTOBというニュース。しかし、今回の最大の受益者は、実はバローなのかもしれない。
図解即戦力 小売業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書[改訂2版]
2021年に刊行された『図解即戦力 小売業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』を最新の情報にアップデート。小売業界のキホンはもちろん、コロナ禍を経ての変化、今後待ち受ける人口減少を見つめながら、小売業界の現在、そして未来への展望を考察します。
小売業は「商品を仕入れて消費者に届ける(販売する)」シンプルなビジネスモデルですが、生産者と消費者とのギャップを埋める重要な機能を提供してきました。
しかし、インターネット、スマホの普及が進み、ECの台頭、キャッシュレス決済などデジタル化により大きく変容する消費行動への対応が迫られているのも現実です。
本書は、インフレやインバウンドの復活で再拡大する業界の動向、高齢化や人口減少による市場の縮小、物価上昇による消費の冷え込み、SDGsへの対応など、さまざまな課題に直面する小売業界の研究本です。
小売ビジネスの基本知識から数多ある業態と儲けのしくみ、最新のトピックに加え、チェーン本部やショップそれぞれに属する仕事の内容や職種の解説など、就職転職に役立つ情報を提供します。
「まいばすけっと」が都心に増え続けるワケ イオンが仕掛けた“ちょっと変なスーパー”の正体
ドラッグストアの大規模再編で、クリエイトSDが描く“勝ち筋”は?
トライアルGO、都内初出店 コンビニではない“真の競争相手”とは
ヨーカ堂の“負け癖”断ち切れるか 復活支える「潤沢な投資余力」も
イオンの攻勢、セブンの苦境――「スーパー大再編時代」と寡占化の行方Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング