SNS時代においては、消費はしばしば「見られること」を前提として行われる。インスタ映えをはじめとする投稿は自己演出であり、モノ撮りやプロップス消費(映える演出のための消費)もまた、望ましい自己像を整えるための行為である。言い換えれば、消費は承認を得るための準備でもあり、そこに映し出される自己はあらかじめ設計されたものである。
推し活が広がった社会では、「応援すること」自体がエンターテインメント化した。そして今、その延長線上で「応援されること」もまた、あらかじめ構図が用意された体験として提供され始めている。
VSINGが提供しているのは単なる歌唱空間ではない。サイリウム演出、投げ銭、ランキングといった仕組みは、「応援される構図」を可視化し、体験として成立させるための設計である。
ヒトを中心とした消費は、承認を偶発的な出来事から、再現可能な体験へと組み替えつつある。推す側と推される側は固定された関係ではなく、状況に応じて入れ替わる可変的な構図として演出される。
渋谷の一角で始まったこの業態は、推し活が到達した次の段階――“推される体験の仕組み化”を映し出しているのかもしれない。
1989年生まれ、静岡県出身。2019年、大学院博士課程在学中にニッセイ基礎研究所に研究員として入社。専門は現代消費文化論。「オタクの消費」を主なテーマとし、10年以上、彼らの消費欲求の源泉を研究。若者(Z世代)の消費文化についても講演や各種メディアで発表を行っている。テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」、TBS「マツコの知らない世界」、TBS「新・情報7daysニュースキャスター」などで製作協力。本人は生粋のディズニーオタク。瀬の「頁」は正しくは「刀に貝」。
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