農林水産省の統計によれば、日本の野菜自給率は80%とされている。この数字だけを見れば、野菜に関しては「国内でまかなえている」と安心する向きもあるだろう。しかし実態は大きく異なる。
日本で使われている野菜の種苗の約90%は、実は外国で生産されたものだ。つまり、国産の種苗だけで計算し直すと、野菜の実質的な自給率はわずか8%程度にまで急落する。
肥料がなければ今のペースで種から野菜を作れない。肥料が届かなくなるリスクに加えて、そもそも「植えるための種」自体も海外に依存しているという、二重の脆弱性を日本の農業は抱えている。
ガソリン価格の高騰は、国民の誰もが「見える」危機だ。ガソリンスタンドの電光掲示板に表示される数字は、報道されるまでもなく生活者の目に飛び込んでくる。
一方、肥料不足は見えない危機である。農家の倉庫に肥料の在庫がどれだけ残っているか、次の作付けシーズンに必要な量が確保できるのか──。こうした情報は、消費者の日常には届かない。影響が食卓の価格として可視化されるのは、数カ月から半年後だ。その時間差こそが、この問題の危険性を増幅させている。
2022年のロシア・ウクライナ戦争時における肥料高騰では、農水省が緊急支援策を講じた。しかし、ホルムズ海峡の封鎖はその当時よりも深刻でありながら、政策も消費者の視点も意識の外にあるように思われる。
国連貿易開発会議(UNCTAD)は3月10日の報告書で、ホルムズ海峡の混乱がエネルギーと肥料の供給に重大な影響を与えていると警鐘を鳴らしている。
半年後に食卓を襲う深刻な食料不安を回避するには、エネルギー対策と同等の熱量で、肥料備蓄や国内採種体制の強化を急がなければならない。
今後は企業・政府はエネルギーだけでなく食料も含めた総合的なサプライチェーンリスクへの対処が求められる。
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