政府の支援強化や需要拡大が見込まれる中、国内造船業を取り巻く環境が変化している。帝国データバンクが調査を実施した。
調査は、帝国データバンクが保有する「商流圏」データをもとに実施した。主要造船12社・グループに部品やサービスを提供する企業群をサプライチェーンとして分析した。
造船の関連企業は全国で1万8766社に上り、年間の取引規模は最大3兆3335億円であることが分かった。頂点となる造船12社の売上高(約3兆円)と合わせると、全体で約6兆円規模の産業を形成している。
構造を見ると、造船会社に直接供給する1次サプライヤーは5816社で、取引額は約3兆円と全体の9割を占めた。2次サプライヤーは1万1400社と社数は多いものの、取引額は3051億円にとどまった。3次サプライヤー以降はさらに規模が小さく、自動車産業に見られるような多層的なサプライチェーン構造とは異なるようだ。
業種別では製造業(8094社)が最も多く、取引額は1兆8338億円を占めた。中でも、金属加工などを手掛ける製缶板金業が最多となり、船舶部品や構造物の製造を支えている。
地域別では、東京が取引額トップとなったが、実態としては関西・瀬戸内エリアへの集積が際立つ。兵庫や大阪に加え、愛媛、岡山、広島といった地域が上位に並び、造船拠点とサプライヤーが一体となった産業集積が形成されている。
政府は造船業を成長分野と位置付け、2035年までに建造量を2024年比で倍増させる方針を掲げた。2025年度の補正予算では「造船業再生基金」に1200億円を計上し、今後10年で官民合わせて1兆円規模の投資も見込まれている。LNGやアンモニア、水素、エタノールを動力源とした環境低負荷型船舶の需要拡大、防衛関連需要の増加も追い風となる。
一方、供給力の制約も無視できない。帝国データバンクは、受注が増加した場合の人員不足についてシミュレーションを実施。造船向け取引が1割増加した場合でも3300人、2倍となった場合には最大で約1.2万人の人員が新たに必要になると試算した。さらに、就業者が減少する前提では不足数は最大1.7万人に拡大する可能性がある。
人員を増やさずに対応する場合は、生産性向上が不可欠だ。受注が倍増したケースでは、1人当たり売上高ベースで平均3.9%の改善が求められるが、人手減少も加味すると10%超の向上が必要になると試算した。
足元では、職人の高齢化や技能継承の遅れに加え、中小企業を中心に設備投資が進んでいない点も課題となっている。現場では「受注はあるが建造が追いつかない」といった声も出ている。
帝国データバンクは「今後の造船業の成長には、サプライチェーン全体での人材確保と生産性向上が不可欠。特に中小サプライヤーにおける設備投資の促進が重要であり、政策支援とあわせて投資マインドをどう引き上げるかが鍵になる」とコメントした。
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