たいていは、経営トップあるいは経営直結の幹部による過度な業績の重視が背景にあります。有無を言わさぬ指示や暗黙の圧力をかけることで、部下が自身の保身から不正に手を染めるというケースです。東芝の会計不正やビッグモーターの損害保険不正請求などはその典型的な事例です。また、神戸製鋼所や三菱電機の品質検査不正や自動車大手各社の認証不正も、本社や上司からの無言の圧力を背景としたカビ型不祥事と言えるのです。
一方、欧米の企業不祥事は、そのほとんどがムシ型であると言われています。欧米においては個人主義がベースにあり、転職やレイオフも日常茶飯事であることから、企業に対する忠誠心が生まれにくい状況があります。そのため、「自己の地位・処遇に対する保身」や「組織防衛のために」などという意識は希薄で、カビ型不祥事は生まれにくいのです。
昭和に成長を遂げた多くの日本企業は、欧米にはない終身雇用を基本に作り上げられた「組織一丸で成長を目指す」という独自の組織風土があり、カビ型不祥事の温床になっていると考えられます。
しかし今回のプルデンシャル生命の不祥事は、誰かの有言・無言の命令圧力があったわけではありません。多数の社員が不正に手を染めていながら「組織ぐるみ」という構図は見当たらないという、国内の企業不祥事史上でも極めて稀なケースです。同時多発的ムシ型不祥事、とでも言えば良いのでしょうか。社員個人が私利私欲を満たすためのムシ型不祥事が組織内で続発していたという、異常な無法状態にありました。
プルデンシャル生命は、米国の金融グループ大手プルデンシャル・ファイナンシャルグループ(以下、PFG)の日本法人です。外資による生命保険会社であり、日本企業とは組織風土が全く異なっていると考えられます。
今回問題になっている保険営業の勤務体系は、どうなってるのでしょうか。「ライフプランナー」と呼ばれる営業職において、研修期間の入社2年経過後はほぼフルコミッション契約となっています。しかも、国内の生保会社に見られるエリア管理、職域管理は排除した完全個人実績主義であるといいます。まさに、欧米型組織の特徴をあわせ持っていることは注目に値します。
米国の場合には個人主義が行き過ぎたとしても、彼ら個々人の精神的な根底にはキリスト教的な社会奉仕や利他の精神が根付いていると考えられます。これが自身の取るべき行動の基準となることで、安易に自己の利益を貪ることへの歯止め役となっています。しかし日本の場合には、このような精神的な背景が見えにくい側面があります。そのため、多くの企業では企業理念と共に行動指針を掲げています。利益を考える前に、一個の社会的存在としてどうあるべきかを共有することで、企業人としての行動のあるべきを示し、抑止力として機能させていると推察されます。
プルデンシャル謝罪会見 「おしゃれすぎる」スーツが“地雷”だったワケ
なぜ「最強組織」から闇堕ち社員が続出するのか プルデンシャル、キーエンス、メガバンクの共通点Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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