「あの件どうなった?」と言われたら負け――「自分から動け」と上司に言われないための簡単なコツ「キレイごとナシ」のマネジメント論(2/4 ページ)

» 2026年03月30日 08時00分 公開
[横山信弘ITmedia]

「先手必勝」にこだわる

 先手必勝とは、相手より先に行動を起こすことで優位に立つという意味である。もともとは囲碁や将棋の世界で使われてきた言葉だ。先に手を打ったほうが主導権を握れる。後手に回れば、相手の動きに振り回されるだけになる。

 ビジネスの世界でも、この原則はそのまま当てはまる。「先手」の反対は「後手」である。「後手に回る」ような仕事のやり方は、絶対におすすめしない。

 お客様から「あの件、どうなりましたか?」と聞かれる前に、こちらから報告する。上司に「進捗(しんちょく)はどうだ?」と問われる前に、自分から状況を共有する。同僚に「あの資料、まだ?」と催促される前に、自分から送っておく。たったそれだけのことで、仕事の主導権は自分の手に移るものだ。

 逆に言えば、「あの件どうなった?」と誰かから問いかけられた時点で、もう負けている。先手を取られたのだ。相手のペースに巻き込まれ、言い訳から始めなければならなくなる。この感覚を、まず持ってほしい。

 私は新入社員にこう伝えている。

 「誰かに聞かれたら、その瞬間に負けだと思え」

 厳しいだろうか? いや、この感覚をゲームのルールだと思えば、厳しいとは受け止めないだろう。聞かれる前に動けば勝ち。聞かれたら負け。非常にシンプルなルールである。このルールを意識するだけで、仕事への向き合い方は大きく変わる。

先回りする人は、なぜ評価されるのか

 先手を打つ人は、周囲から「仕事ができる人」と見なされやすい。なぜか。理由は単純である。先回りして動くと、相手の期待を超えられるからだ。

 例えば会議の前日に資料を共有する人がいる。一方で、会議の直前になってバタバタと準備する人もいる。どちらが信頼されるかは明白だろう。前日に資料をもらえれば、参加者は事前に目を通せる。会議の質が上がるのは当然だ。直前に配られた資料を見ながらの議論は、どうしても浅くなりがちである。

 ただし、ここで注意してほしいことがある。動き出しが早いだけでは不十分なのだ。依頼されてから素早く動くのは当然である。先手必勝とは、依頼される前に先回りすることを意味する。

 以前、敏腕キャビンアテンダントの方と話す機会があった。その方はこう言っていた。

 「コールボタンを押された時点で、私たちの負けです」

 乗客をしっかり観察していれば、ブランケットがほしいのか、薬を飲むための水を必要としているのか、ぐずついている子どもが興味を持ちそうなオモチャを持っていったほうがいいのか――。こうしたニーズを、呼ばれる前に察知できるという。これはまさに先手必勝の姿勢だ。

 つまり、先手を打つには初速の速さだけでなく、洞察力が求められる。相手が何を必要としているかを観察し、先回りして動く。この意識がない限り、どれだけスピードがあっても後手に回ってしまう。

 先手を打てる人は、自分に余裕が生まれる。余裕があるから冷静に判断できる。冷静に判断できるから、仕事の質も自然と上がっていく。好循環が生まれるのだ。

 反対に、後手に回る人はつねに追われている。追われているから焦る。焦るからミスが増える。ミスが増えるからさらに時間がなくなる。悪循環だ。先手か後手か。たったそれだけの違いが、仕事の成果と精神状態の両方を左右するのである。

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