教育の成果は、すでに現場で具体的な形となって現れている。
Claudeの有料版を約30アカウント用意し、現場の社員が自然言語で指示してAIにコードを書かせる「バイブコーディング」によって、短期間で数々のシステムを開発している。
例えば、同社には敷地内に複数の工場があり「誰が今どこにいるのか」を把握することに苦労していた。そこで各社員の出欠や、どの工場にいるかが一目で分かる「所在確認アプリ」を開発。工場内のタッチパネルモニターにも表示され、チームの連携をスムーズにしている。
製造現場ならではの課題だった「日報」をデジタル化。油で汚れたり、火花で燃えたりするリスクがある紙の日報を廃止し、iPadで入力できる専用アプリを導入した。業務内容によって入力項目が異なるという複雑さも、部署ごとにカスタマイズすることで解決している。
また、直近で開発したのが「加工完了通知アプリ」だ。コプレックの工場内でも、一つの製品を作る過程には「前工程」と「後工程」が存在する。前工程で加工されたものを、後工程が引き取り、次の作業へと進める流れだ。後工程の担当者にとって、前の作業がいつ終わるか、進捗状況を把握しておく必要がある。しかし、前工程の担当者が都度、作業の手を止め、電話をかけたりメッセージを送ったりして進捗を伝えることは効率が悪く、負担になっていた。
そこで、工場内に置かれたタブレットのボタンを押すだけで、自動的に進捗報告のチャットが飛ぶ仕組みを構築。作業の合間に指1本で完了報告ができるようになった。
開発したのは溶接を担当する鈴木翔也さん。最初の依頼からわずか2週間、実作業時間は現場のフィードバックを受けてからの改修作業を含め、計6時間ほどで完成させたという。コプレックに入社する前は飲食業で働いており、ITスキルを体系的に学んだのは、3月の研修が初めてだった。
「デジタル関連の知識は個人的に趣味で学ぶ程度でした。工程の完了報告は、以前から課題として挙がっていて、私自身も『このようなアプリがあれば……』というイメージはありました。しかし、業務をしながら開発・運用することは難しい状況にありました」と鈴木さん。
研修でスキルが身に付き、Claudeも導入されたことで課題の解決につながったという。
「これまでの製造業は、コストダウン、マニュアル順守、PDCAを回すことの3つが正義でした。でも、それだけではもう立ち行かない。AIネイティブな会社が、この板金業界にも必ず現れます」(小林社長)
社長自身「Claude Code」や「Cursor」を駆使し、わずか1カ月足らずで「人事システム」「給与・賞与計算システム」を自作した。毎朝、Claudeと対話をしながら1日のタスクを整理している。いずれは、社員一人一人にClaudeが秘書のように付くことを目指して、社内勉強会も定期的に開催している。
同社は2026年中に、全社員の50%以上が生成AIを使いこなし、現場の改善に必要なシステムを開発できる体制を作ることを目標としている。AIネイティブな思考を持った職人たちが、ものづくりとデジタルの知能を融合させる――そんな新しい町工場の姿を実現しようとしている。
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