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「売上99.7%が架空でも表彰」 KDDI不正会計が暴いた「悪い報告が上がらない組織」の病理(1/2 ページ)

» 2026年04月03日 07時00分 公開
[大杉春子ITmedia]

著者紹介:大杉春子(おおすぎ・はるこ)

レイザー代表取締役/RCIJ代表理事

コミュニケーション戦略アドバイザーとしてPR戦略の企画から危機管理広報まで、企業・行政のブランド価値向上を包括的に支援。

日本において唯一、コミュニケーション戦略におけるリスク管理に特化したカリキュラムを展開する日本リスクコミュニケーション協会(RCIJ)を2020年に設立。

上場企業や防衛省での豊富な実績を持つ。

 「うちの会社は、大丈夫だろうか」

 KDDIの子会社で発覚した巨額の不正会計の報道を目にして、自問自答した経営者や管理職は少なくないはずだ。

 2461億円の架空売り上げ、外部へ流出した329億円、損失646億円。

 この3つの巨額を見ると、つい「自分には関係のない世界の話」として処理してしまいそうだ。ただ、この事案には業種や規模を問わず、あらゆる企業に潜む“不祥事の共通構造”が隠されている。

 なぜ、売上高の99.7%が架空だったにもかかわらず、不正に関与した社員は「優秀な人材」として社内表彰され、7年間も組織は止まることができなかったのか。ニデックなど、近年相次ぐ不正事例も交えながら、危機管理の最前線で見えてきた「悪い報告が上がらない組織」の病理と、経営者が真に問うべき課題を考える。

photo01 KDDIの松田浩路社長(アイティメディア撮影)

7年間隠蔽された「2461億円の架空売り上げ」の手口

 まず、今回の事案の事実を確認しておきたい。

 不正が行われたのは、KDDIの子会社であるビッグローブ、さらにその子会社であるジー・プランのインターネット広告代理事業だ。調査の結果、会社ぐるみの組織的な不正ではなく、ジー・プランの社員2人が関与していたことが明らかになった。手口はこうだ。

 実在しない広告主からの受注を装い、実態のない広告料を複数の会社間でぐるぐると循環させる「架空の循環取引」を繰り返していた。その過程で外部の広告会社に「手数料」という名目で資金を支払い、会社のお金を外部に流出させる仕組みを作っていた。

photo01 架空循環取引の商流(KDDIのプレスリリースより)

 この不正は、遅くとも2018年8月から2025年12月まで、約7年間にもわたって続いていたという。その間に過大計上された売上高は累計2461億円。驚くべきことに、2社の広告代理事業における売上高の99.7%が架空取引によるものだった。外部へ流出した資金は329億円。KDDIはこれを受けて過去の業績を下方修正し、新たに646億円の損失を計上することになった。

 しかも、不正を主導していた社員たちは、架空取引によって、見かけ上の売上高を大きく伸ばしていたために社内で表彰まで受けていた。その裏で、取引に協力した外部業者からキャバクラでの接待を含む約3000万円の見返りを、個人的に受け取っていたことも判明している。

 「(売り上げを改善しなければ)事業が撤退になる」というプレッシャーから始まった不正が、7年間も続いた。あ然とする話だが、長く危機管理の現場に立つ者として「なぜ止まらなかったのか」という問いへの答えは、実はそれほど難しくない。

photo01 不正を主導していた社員たちは、架空取引によって、見かけ上の売上高を大きく伸ばしていた。そのため社内で表彰まで受けていた(写真提供:ゲッティイメージズ)

ニデック、グッドスピード……繰り返される不正の底流

 企業の不祥事、とりわけ不正会計は、特定の企業だけの問題ではない。業種や規模を問わず、似た構造のもとで繰り返されている。近年公表された事例から、3件を取り上げたい。

グッドスピード

 中古車販売大手グッドスピードでは、事故車の塗装作業において、保険金の不正請求が発生した。

 これを受けて2024年1月、第三者委員会の調査報告書を受領・開示。同年3月に東京証券取引所から改善報告書の提出と違約金の徴求を受けた。

 報告書によれば、少なくとも2018年9月期から2023年9月期第3四半期にかけて、要件を満たさない売り上げの先行計上が全社的に行われていた。会社全体を実質的に仕切っていた専務取締役の指示のもと、多数の役職員が関与、あるいは見て見ぬふりをしていた点が際立つ。

ガーラ

 ゲーム事業を手掛けるガーラでは、2019年3月期から2024年12月期第1四半期まで、本来は費用として計上すべきゲームの開発費を、資産として計上し続ける不適切な処理が行われていた。2024年9月に特別調査委員会の調査報告書を受領・開示し、同年12月に東京証券取引所から改善報告書の提出と違約金の徴求を受けた。

 その後の調査によると、社内に会計方針そのものが存在せず、経営陣の認識不足のもとで経理責任者に判断が丸投げされていたという。この不正によって過去2期連続で債務超過に転落していたことも、後に明らかになった。

ニデック

 ニデックでは、2020年度から2025年度第1四半期にかけて、国内外の多くの拠点で長期間にわたる不適切な会計処理が行われていた。2026年2月に第三者委員会の調査報告書を受領し、同年3月に開示した。

 棚卸資産の評価損を先送りにする、固定資産の損失を見て見ぬふりをする、費用を不正に資産として計上する、政府補助金を不正に収益計上する──その内容は幅広い。

 根本原因として報告書が明確に指摘したのは、創業者が課す「非現実的な業績目標」と、それに伴う組織全体への強烈なプレッシャーだ。不正によって生じた「負の遺産」が長年にわたって積み上がり、誰も解決できないまま先送りされ続けていた。

photo01 企業の不祥事、とりわけ不正会計は、特定の企業だけの問題ではない(写真提供:ゲッティイメージズ)
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