“働きやすさ=ウェルビーイング”という勘違い 福利厚生の充実は「入り口」に過ぎないワケ本質的な取り組みは?(1/2 ページ)

» 2026年04月08日 06時00分 公開
[やつづかえりITmedia]

 「社員のウェルビーイング」を意識する企業が増えている。しかし、その取り組みの多くは健康管理やメンタルヘルスケア、ワークライフバランスの向上など、福利厚生や柔軟な働き方の選択肢を充実させるといったものにとどまっている。

本質的なウェルビーイング向上策は何か(写真はイメージ、ゲッティイメージズ)

 経産省も「ライフデザイン経営で、あなたの、社員の、ウェルビーイングをサポート」というキャッチコピーの下、社員の人生設計をサポートする企業の取り組みを紹介したり、家事支援サービスの活用を勧めたりしている。

「ライフデザイン経営」の概念図 出典:経済産業省Webサイト

 こうした取り組みは確かに重要だが、それだけでは不十分だ。なぜなら、家事支援サービスのおかげで仕事に使える時間が増えたとしても、職場の人間関係が悪かったり、仕事にやりがいを感じられなかったりすれば、社員のウェルビーイング向上にはつながりにくい。ウェルビーイングを、働きやすさや個人のプライベートの充実によって実現するものとして捉えていると、本質的な部分を見落とすことになる。

 ポジティブ心理学の知見や近年の組織研究を基に、社員のウェルビーイング向上に必要な要素と、企業の成長につながる取り組みを整理する。

“働きやすさ=ウェルビーイング”という誤解

 「ウェルビーイング」とは、ざっくりと「幸せな状態」と捉えても、それほど間違いではない。しかし、WHO(世界保健機関)による「単に病気がないとか虚弱でないということではなく、身体的、精神的、社会的に完全に良好な状態」という説明が示すとおり「バランスの取れた、持続的な状態」という意味が含まれている点が重要だ。

 「宝くじが当たった!」といった刹那的な幸せだけでは、ウェルビーイングな状態とは言えない。身体的・精神的・社会的に満たされた状態が持続していること──それがウェルビーイングの本質だ。

 社員がそのような状態にあれば、仕事に集中し、安定的に成果を出してくれるだろう。また、社員のウェルビーイングを支援する姿勢を示すことは、人材採用や離職防止にも役立つはずだ──というのが、ウェルビーイング向上を目指す企業のロジックだ。方向性としては正しい。ただし、その内容と手段に改善の余地がある。

 ポジティブ心理学の提唱者であるマーティン・セリグマンは、ウェルビーイングは以下の5つの要素で構成されるとする「PERMA理論」を提示した。

P(Positive Emotion): ポジティブな感情(喜び、感謝、愛など)

E(Engagement): エンゲージメント(高度に集中している心理状態、フロー体験)

R(Relationships): ポジティブな関係性(他者との信頼や愛などによるつながり)

M(Meaning): 意味・意義(人生や仕事に感じる価値)

A(Achievement): 達成(目標の追求と達成感)

 この5要素を見ると、働く人のウェルビーイングを高めるには「仕事そのものから得られるやりがい、没頭感、そこから得られる喜び」や「同僚や上司との信頼や協働意識」が欠かせないことが分かる。福利厚生はPERMAの一部を支えるに過ぎず、全ての要素を満たすには、日々向き合う仕事そのものや、職場の人間関係の充実が必要だ。

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