KDDI子会社「売上の99.7%が架空」 不正を暴いたのは“社長の直感”、実はこれこそ問題なワケ古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(2/3 ページ)

» 2026年04月10日 06時00分 公開
[古田拓也ITmedia]

「売り上げの数字」だけを見ていた親会社の責任

 これだけの規模に膨れ上がりながら7年間発覚しなかった背景には、a氏の周到な隠蔽(いんぺい)工作がある。

 まず、a氏とb氏は取引先とのやりとりを完全に独占し、他の社員を一切関与させなかった。社内で疑問を持つ者が現れた場合には「各代理店の取引先がどこであるかはノウハウであり、これが明らかになると当該代理店を介さずに直接取引が可能となる」「各代理店の先の商流は確認しないのが業界の取引慣行である」などと説明したという。一見説得力のあるロジックによって、組織が商流全体の把握に至るリスクを阻止した格好だ。

 報告書が特に注目しているのは、虚偽の成果レポートの精巧さだ。成果件数を単純な右肩上がりにするのではなく、あえて減少する時期も設け、その時期に成果が上がらない理由まで用意していたという。現実の広告ビジネスに見せかけるための「演出」が施されていたのだ。契約書や請求書も正規の取引と同様の外観を備え、対象商品には成果単価の高額な商品を選定して、取引金額が大きいことの説明が付くよう工夫していた。

 さらに、ジー・プラン(a氏またはb氏)が関与しない形で下流代理店と上流代理店が直接接触することがないよう、情報の遮断にも気を配っていた。

 報告書ではKDDIの管理体制について、PL(損益計算書)への貢献のみを重視し、キャッシュフローの観点からの検証が欠如していたことを主要な問題として挙げている。つまり、子会社から上がってくる「売り上げが伸びている」という数字だけを見て、その裏側で動いている資金の流れには目を向けなかった。

 PLは好調に見えても、キャッシュフローは着実に悪化していた。この乖離(かいり)こそが、最大の赤信号だったはずだ。

2025年度における本件架空循環取引の商流(KDDI特別調査委員会の報告書

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