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なぜ日本の地方イベントは「一発屋」で終わるのか? SXSW幹部が語る「集客」より大切なこと

» 2026年04月11日 08時00分 公開
[河嶌太郎ITmedia]

 地方創生や新産業の創出を掲げ、日本各地でテックイベントやピッチ大会が活発に開催されている。しかし、その多くが「一過性の集客」や「単発の話題作り」に終わり、街に新しい産業を根付かせられていないのが実情だ。

米テキサス州の「サウス・バイ・サウスウエスト」(SXSW)は、今や世界中から延べ50万人以上を呼び込む「IT・スタートアップの祭典」となっている(photo by Jordan Hefler)

 1987年に地域の音楽祭として始まった米テキサス州の「サウス・バイ・サウスウエスト」(SXSW)は、今や世界中から延べ50万人以上を呼び込む「IT・スタートアップの祭典」となっている。SXSWの開催地であるオースティンには、米Oracleやイーロン・マスク氏率いる米Teslaといった世界的企業が本社を構える。イベントの活況は街のブランド向上にも寄与し、テック企業を惹きつけるオースティンの土壌を形作る要素の一つとなっている。

 イベントを「一発屋」で終わらせず、都市の発展につなげるための条件とは何か。「日本版SXSW」は、どうすれば生まれるのか? 名古屋市で開催された「TechGALA Japan」に登壇したSXSWのピーター・ルイスCCO(チーフコマーシャルオフィサー)に、イベント集客の先にある「街づくり」の本質を聞いた。

SXSWのチーフコマーシャルオフィサー(CCO)を務めるピーター・ルイス氏(撮影:河嶌太郎)

オースティンと名古屋は違う 「行政か民間か」より重要なこと

――日本は米国と比べると、行政主導の地方イベントが多いように思います。日本で、SXSWのような民間主導のイベントを展開していくためには何が必要ですか?

 イベントを成功させられるかどうかは、現地のローカルコミュニティーの特色や熱量を、どれだけ的確にイベントへ反映できるかにかかっています。

 そういった意味では、イベントが行政主導であろうと、民間の草の根の活動であろうと、あまり大きな問題ではないと思っています。ローカルコミュニティーの特色や熱量をイベントに反映していく上で最も重要なのは、正しい当事者、つまり適切なステークホルダーをしっかり巻き込めるかどうかです。

 私たちはこれまで、民間企業としてイベントを成功に導いてきました。その成功モデルは、他でも再現性があるものだと思っています。一方で各イベントにはそれぞれ独自の特徴があり、オースティンと名古屋という地で、それぞれうまくいくことも当然異なります。

 イベントというのは、それぞれ独自の道を切り開いていくものなのだと思います。大事なのは、自分たちのポジショニングです。例えば名古屋であれば、名古屋という街の立ち位置をしっかりと理解することが重要だと思います。

「放任」ではない SXSWを支える徹底した“キュレーション”の正体

――ローカルコミュニティーの特色をイベントに反映させるために、SXSWとして心掛けていることは何でしょうか。

 プログラムを考えるスタッフが、どれだけ特色の反映に努めているかです。

 SXSWは、参加者がプログラム案を提案できるオープンなイベントではあります。他方で、そのイベントの内容は全て、キュレーションを担当する私たちのスタッフがしっかりと確認しています。

 業界の最新動向をきちんと反映したものになっているか。テックやAIのトレンドを踏まえた内容になっているか。これを、キュレーションスタッフが細かくチェックしているわけです。

 私はSXSW発展の裏には、このキュレーションスタッフの貢献があると感じています。現地のコミュニティーが求めているものを的確に反映できるように、最新のトレンドをしっかりと見極めて取り入れているのです。

10年で3万5000室増 インフラ不足を「街の成長」に変えるプロセス

――日本では、地方都市でイベントを開催する際に、宿泊施設が不足する問題が発生しがちです。近年はオーバーツーリズムも課題になっています。オースティンの場合は、現在はもう受け入れ体制ができていると思いますが、SXSWを始めた当初、宿泊に関する問題などは起きなかったのでしょうか。

 もちろん、そうした問題に直面しました。オースティンではここ10年間でホテルの部屋数が3万5000室ほど増えました。しかし、そこに至るまでの2008年から2015年ぐらいの間には宿泊施設の不足と、それに伴う宿泊費の高騰という問題に直面していました。

 また、オースティンという街自体がここ20年間で著しく成長し、規模が大きくなってきました。「オースティンでイベントを開催したい」という声が多く寄せられるようになり、以前のコンベンションセンターでは対応しきれず、一度取り壊して新しく作り直しているところです。

イベント集客よりも「住みやすい街」へ 米国が目指す地方創生の形

――日本では少子高齢化が進んでおり「地方創生」の必要性が叫ばれています。イベントで人を集めて地方を盛り上げようとする動きはあるのですが、米国の視点から見て、何かアドバイスできることはありますか。

 米国が、日本と全く同じような問題に直面しているわけではありません。しかし、米国の都市という観点でお話ししますと、単にイベントをどう開催するかというよりは、Livable、つまり「もっと住みやすい街に」していかなければならないという趣旨の取り組みが地方でも行われています。

 米国の地方都市においても、文化的な魅力によって人々を惹きつけ、定住先の候補になるような街になっていかなければならないと、方法論を議論しています。

 その施策の一例として、魅力的な公園の整備があります。公園はイベントを開く場所でもありますから、そういった意味ではイベントとも関連してきます。そして単発のイベントによって人を集めるよりも、人々に長く住んでもらえる街づくりをしていくアプローチの方が、現在の米国の地方都市において主流となっています。

「SXSW 2025」のショーケースライブに出演した日本人の眉村ちあきさん(photo by Adam Kissick)

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