米テキサス州で毎年3月に開催される「サウス・バイ・サウスウエスト」(SXSW)。1987年に音楽フェスとして産声を上げたこのイベントは、今や世界中から50万人以上が集まる「IT・スタートアップの祭典」へと、その姿を変えている。
SXSWが世界から注目される理由は、同イベントが新しいビジネスの「登竜門」となってきたからだ。過去には米Twitter(現X)がユーザーを増やしたり、米Airbnbが初期のファンを獲得したりするきっかけを生み出してきた。
【音楽祭がなぜ「ITの聖地」に? SXSWを変えた“参加者主導”のプログラム運営術】に引き続き、同社のグローバル戦略を統括するチーフコマーシャルオフィサー(CCO)であるピーター・ルイス氏に、異分野を交わらせることでイノベーションを誘発する仕掛けについて聞いた。
――SXSWをきっかけにして世に出てきた企業やサービスがたくさんあります。なぜ、世界的な企業を次々と発掘できたと考えていますか。
私たちの根底にあるマインドセットは「全く異なる分野の才能やアイデアが一つのステージ上で交わり、予想もつかない新たなものが生まれる瞬間を実現したい」というものです。そして、そのステージで起きる化学反応を通じて、誰もが少し先の未来を垣間見ることができる。私はSXSWをそのような場所にしたいと考えています。
それは、3年や4年といった短期的なスパンの話ではありません。特定の会社や音楽、映画といった単一の領域に集中することでもありません。もっと長期的な将来にわたって、何かが起こっていくイベントにしたいのです。私はSXSWを「新たなビジネスやキャリアが誕生する場所」であると同時に、既存の概念を打ち破るプラットフォームにしたいと考えています。
――そのようなプラットフォームで新たなビジネスが次々と育っていく背景には、発信する起業家たちだけでなく、それを面白がって受け入れる参加者側の熱量が高いことも、要素としてあるのではないのでしょうか。
そうですね。参加者の存在も大きいです。参加する年代は若く、アーリーアダプターと呼ばれる先行採用者であり、かつ比較的裕福な方が多い特徴があります。
ですから企業側は、SXSWに参加する人を「さまざまなことに自ら関わりたい、巻き込みたいと思っている人々であり、次の大きな新しいテクノロジーのうねりをいち早く掴みたいと熱望している人々」と明確に認知しています。
SXSWはまさに、そうしたイノベーションを求める人々が集結する場なのです。Airbnbを例にとっても、このステージで斬新なサービスを発表する起業家がいる一方で、それを誰よりも早く見つけて率先して使いこなそうとする熱量を持った人々が同時に集まっていました。
参加者は単なる見学者ではなく、未知の製品やサービスにいち早く触れ、自ら進んで使い込んでくれる強力な初期ユーザーとなっていくのです。このように、新しい価値の「作り手」と、それをいち早く受容する「感度の高い使い手」が直接交わる非常にユニークなエコシステムができあがっていること。これこそが、SXSWから世界的企業が次々と誕生している最大の要因なのです。
――米Oracleやイーロン・マスク氏が率いる米Teslaといった世界的企業も、SXSWの開催地であるオースティンに拠点があります。街の風土が、こうした企業誘致を後押ししている側面はあるのでしょうか。
あると思います。オースティンはとても若い街です。テキサス大学もありますし、若い人がたくさん訪れます。いろいろな人材が集まり、そして人材を輩出している街でもあります。
大学を卒業したばかりの優秀な若手エンジニアや、コンピューターサイエンスの専門知識を持つ気鋭のサイエンティストが街にあふれています。高度な技術人材が常に供給され、互いに刺激し合って成長していく類まれなエコシステムと、活気ある文化がオースティンには根付いています。
TeslaやOracleといった世界的企業がこの街に惹きつけられるのも、まさにこうした豊富で優秀な人材の層と、イノベーションを生む土壌があるからに他なりません。
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