本記事の内容は、RX Japan(東京都中央区)が4月8〜10日に開催した「Japan DX Week」内で実施されたセミナー「AIと共に生きる、AIネイティブな組織づくり 〜AIとの共存に向けた道のり〜」の内容を要約したもの。
2025年2月、ディー・エヌ・エー(以下、DeNA)の南場智子会長は「AIオールイン」を宣言した。AI活用により業務効率化を進めることで、既存事業に携わる従業員を半数に減らし、AIに関する新規事業に回す方針を掲げた。
南場会長の「AIオールイン」宣言を受けて、同社は「AI活用100本ノック」と称し、DeNA社員のAI活用事例を毎日Xで紹介する取り組みを実施した。AI活用100本ノックでは会社全体で1000本以上のAI活用に取り組んでおり、中には「生産性20倍」「業務の90%を効率化」といった成果を上げる取り組みも生まれた。
同社の住吉政一郎氏(AIイノベーション事業本部 事業本部長)は「AI活用100本ノックは業務効率化の具体策だけでなく、組織全体のAI活用を阻むハードルも浮き彫りにした」と指摘する。同社が100本ノックの末に見つけたAI活用を阻む3つのハードルとは?
AI活用100本ノックでは、複数の事例で成果を上げた。
「開発エンジニアのプロジェクトでは、AI活用により生産性が20倍になった。法務部門におけるリーガルチェックでは、AIが業務フローを90%効率化した。品質保証ではAIがテストを自動化し、従来の半分の人員でこれまでの品質を維持できるようになった」(住吉氏)
住吉氏はAI活用100本ノックにより得た知見から「AI活用を阻むハードルは『個人』『組織』『経営』の3つである」と指摘する。
個人のハードルとは知見のロスを指す。「個人で優れたプロンプトを開発しても、チーム内で共有されていなかった。異動などでメンバーが交代すると知見が失われる『プロンプトの属人化』が起きていた」(住吉氏)
そこで、同社はチーム内でプロンプトを可視化し、共有できるツールを導入。優れたプロンプトという個人の知見を、組織の資産として蓄積する仕組みを構築した。
これまでのITツールは「管理部署がルールを決めて導入する」というトップダウンが主流だった。「AI活用は『こうしたい』という要望が現場から生まれるボトムアップによるものが多い。現場が『AIエージェントを作りたい』と希望しても、セキュリティやアクセス権限の壁にぶつかり、断念するケースが多発していた」(住吉氏)。これが組織のハードルだ。
そこで同社は、AIを自由に活用できる「サンドボックス」(安全な実験エリア)を用意し、そのルールの範囲内であれば現場が自由に試せる環境を提供した。
3つ目の経営は、投資判断の基準を指す。今や、AIは「あると便利なもの」から「事業のために必要なもの」へと変わりつつある。住吉氏は「AIを導入する際、オフィスチェアやモニターと同じような『あれば効率が上がる』という曖昧(あいまい)な投資判断をされるケースが多い」と指摘する。
AIの中には月額利用料が一人当たり数十万円など高額なものもある。住吉氏は「AI導入にも定量的・定性的な視点から、合理的な投資判断が求められている」と指摘する。
AI活用を掲げる一方で、個人の利用にとどまり、全社を巻き込んだ取り組みに至らないと悩む企業は多い。DeNAが語る3つの壁を解消することが、AI活用をスムーズに進めるための鍵となるのかもしれない。
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