前回書いたPDP(Product Detail Page、商品詳細ページ)の話に戻ります。
広告の純増効果を正しく測定するには「同一商品の同一定義」が小売・メーカー・プラットフォーム間で統一されている必要があります。
しかし実態はどうでしょうか。
同じ商品が異なるコード、異なる名称で登録されている。リニューアル品と旧品のひも付けがない。カテゴリー分類がチェーンごとに異なる──。「広告を見た人がこの商品を買った」と言っても「この商品」の定義自体が揺れています。
PDPの整備→純増効果測定の信頼性向上→メーカーの出稿意欲向上→広告収入の拡大──。この連鎖を理解せず「まず広告枠を作って収入を得よう」から入ると、がっかりリテールメディアが出来上がります。
ROASという指標を全否定するわけではありません。短期の広告運用最適化には有用です。問題はROASだけで投資判断していることにあります。並行して追うべき指標を4つ挙げます。
1.インクリメンタリティ(純増売上): 広告がなければ発生しなかった売り上げです。A/Bテストまたは地理的ホールドアウトで定期検証する仕組みが必要です。
2.New-to-Brand率(新規獲得率): 広告経由の購入者のうち、過去一定期間にそのブランドを買っていない人の比率です。既存顧客の「確認購買」に広告費を使っているだけなのか、本当に新しい顧客を獲得しているのかを判別します。ID-POS(個人の購買データ)の履歴があれば算出可能で、実装ハードルは比較的低い指標です。これは競合に苦戦しているメーカーにとっても重要な指標です。
3.カテゴリ波及効果: 広告対象商品だけでなく、同カテゴリー全体の売り上げ変動を測ります。メーカー間の単純なブランドスイッチなら、小売りにとってのの価値は小さいです。カテゴリーの底上げが確認できて初めて、小売りがリテールメディアに本気で取り組む理由が生まれます。
4.LTV貢献度(顧客生涯価値への寄与): 1回の購買ではなく、広告接触後の継続購買率・頻度の変化を追跡します。短期ROASではなく、中長期のファン化に寄与しているかを見る視点です。
リテールメディア市場はこれからも拡大します。しかしその成長がROASという心地よいウソの上に成り立つ限り、いずれメーカーの信頼を失います。
商品データの構造化は、信頼できる効果測定の前提条件です。そのためにもPDPの整備が重要なのです。
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