内製化を推進する実働部隊として、2023年8月に誕生したのが丸紅の子会社Digital Experts(デジタルエキスパーツ、東京都千代田区、以下DE)だ。その役割について上西氏は、単に「デジタルサービスを提供する会社」ではなく「丸紅の事業にDXを通じて貢献していくためのエンジニアリング集団」だと説明する。
なぜ社内の一部署ではなく、あえて事業会社を設立したのか。理由について上西氏は「人材の確保と柔軟な組織運営」を挙げる。
IT・デジタル領域の高度な専門性を持つ人材を確保するためには、既存の商社の規律や人事体系、勤務形態といった枠組みに縛られない環境が必要だった。DEの所属社員は現在、十数人。専門能力を最大限に発揮できるよう設計された雇用形態や福利厚生を備えることで、優秀なエンジニアを集めている。
別会社化によるコミュニケーションの断絶という懸念もあるが、物理的な工夫で解決を図る。DEのエンジニアと丸紅の社員は、本社の同じフロア、同じフリーアドレスのエリアで隣り合って働いているのだ。
「発注側と受注側」という関係ではなく、同じデスクで混ざり合い、心理的にも重なり合って働く。こうした距離の近さが、現場の課題を即座に実装へとつなげるアジャイルな開発体制を支えていると、DEソフトエンジニアの大森章裕氏は話す。
こうした内製志向の機動力が発揮されたのが、社内の生成AIプラットフォーム「Marubeni Chatbot」の展開だ。
2023年3月の「GPT-4」のリリース翌日には、丸紅本体のエンジニアが開発に着手。1カ月でベータ版をローンチし、その数カ月後にはグループ全体、さらに海外拠点へと展開した。現在、利用事業者数は160社、月間アクティブユーザーは約1万2000人を数え、業務削減時間は年間120万時間に達している。
このプラットフォームが短期間で浸透した背景として、Digital Expertsのソフトエンジニアである大森章裕氏は4つの要素を挙げる。
1つ目は「圧倒的スピード感」。2つ目に「圧倒的安心感」(セキュリティ)。機密情報を安心して扱える環境を整えたことで、現場が実務に即した情報を入力できるようになり、活用が加速した。「セキュリティはプロダクト普及のブレーキだと思われだが、むしろ活用を促進するためのアクセルだ」と大森氏は強調する。
3つ目は「圧倒的自由度」。特定のAIモデルに限定せず、GPT、Gemini、Claude、Perplexityなど、複数のモデルから現場のユーザーが最適なものを選べるようにした。
4つ目が「圧倒的機能数」。単なるチャットにとどまらず、翻訳、要約、資料作成支援など、現場の要望に応じたツールを、そのインパクトを確認しながらアジャイルに開発・追加し続けている。DEと現場が密接に連携しているからこそ実現できるスピード感といえる。
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