なぜ、ビジネスホテルは「寝る場所」→「癒しの空間」に進化した? “ビジホ飲み”人気急上昇の背景(4/6 ページ)

» 2026年05月01日 05時00分 公開
[岩崎剛幸ITmedia]

日本のビジネスホテル発展の4段階

 日本のビジネスホテルは、その後どのような変遷をたどったのでしょうか。詳細は日本のビジネスホテル変遷の図表で解説しますが、4つの変化を経て今に至ると見ることができます。

【ビジネスホテル創成期:1980年代】「出張者を安く泊める装置」

 この時代のビジネスホテルは、都心の駅前や地方都市の中心街に立地し、シングルルームを効率よく回すことこそが最大の価値でした。

 アパホテルの1号店開業が1984年、東横インの1号店開業が1986年。まさにこの頃から「都心や地方都市への出張需要を、ある程度標準化した小さな客室」で獲得するためのチェーンホテルの発想が広がり始めており、ビジネスホテル創成期と呼べる時代です。

【ビジネスホテル成長期:1990年代〜2000年代】「全国どこでも同じ安心」を提供

 ビジネスホテル成長期は地方やロードサイド(幹線道路沿い)にもビジネスホテルが増え始めた時期です。東横インは均質なサービスを提供し、ルートインは地方・ロードサイドも含むビジネスホテルネットワークを築きました。

 この時期に、ビジネスホテルは単館の宿ではなく、全国チェーンのサービス品質という「安心」を売る業態に進化しました。無料朝食や独自の会員制度、駐車場、ネット予約などを整備。「出張のストレスが少ない宿」が続々と作られていきました。

【ビジネスホテル成熟期:2000年代後半〜2010年代】「快適性」と「体験価値」の競争時代

 この時期にはスーパーホテルの「睡眠品質・顧客満足」や、ドーミーインの「大浴場・サウナ・湯上りサービス・夜鳴きそば・ご当地朝食」という、各社のサービス特性がより鮮明になってきました。

 特にドーミーインの無料サービス「夜鳴きそば」のインパクトは大きく、これがあるから出張時には必ずドーミーインに泊まるというリピーターが、筆者の周りには何人もいます。

夜鳴きそば(出典:ドーミーインの公式Webサイト)

 つまり、ビジネスホテルは「寝るだけの場所」から、短い滞在でも「出張の疲れを癒し、心身を整える場所」へと進化したのです。アパホテルは高密度で機能的な新都市型ホテルを打ち出し、ドーミーインは「住むホテル」を掲げるなど、各社のコンセプトが明確になり始めたのも成熟期の特徴です。

【ビジネスホテル転換期:2020年代〜】「ビジネス専用」から「都市型万能宿泊施設」へ

 コロナ禍でビジネスホテルを含めたホテルや旅館の宿泊需要は大きく落ち込みましたが、その後は急回復していきました。

 2024年の年間訪日外国人客数は3686万9900人と、過去最高を更新しています。その結果、日本のビジネスホテルはインバウンド受け入れの器として広く認知され、宿泊者の多くは訪日外国人という光景も珍しくなくなりました。

 2024年の延べ宿泊者数は約6億5000万人となり、2019年の約5億9000万人を大きく上回っています。そのうち訪日外国人の延べ宿泊者数は1億6000万人を超えています。この多くを、ビジネスホテルが受け入れていると考えられます。

日本のホテル・旅館 延べ宿泊者数の推移(出典:国土交通省観光庁「宿泊旅行統計調査」)
日本のビジネスホテルの変遷(筆者作成)

 今やビジネスホテルは出張客だけでなく、訪日客、国内観光客、推しのフェスやライブ遠征客、週末の家族旅行客まで取り込むようになっているのです。

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