まず、怒りとは何か? を正確に理解しておく必要がある。怒りの本質は、攻撃性ではない。「無力感」だと、よく言われる。
人間が怒りを感じるのは、その事態に対して自分にはどうしようもないと分かったときだ。何かしら「自分にはどうにもならない状況」がそこにある。逆に言えば、自分でどうにかできる事態であれば、人は怒るのではなく、(少しばかり感情的にはなっても)解決に向かって歩みを進めることができる。
例えばPCが壊れて怒りを感じる人は「自分ではPCを修理できない」という無力感を抱えている。遠くで起きている戦争のニュースを見て憤慨する人も、「自分には何もできない」という無力感を、外側に向けて発散させているのだ。
怒っている人は実は「何もできず、どうしようもない」ということを内心では分かっている。その自己否定感がつらくて受け入れられないから、「怒り」という形で外に向けて発散させる。怒りとは、いわば内なる無力感の「解毒作用」なのだ。
自分が無力だと感じるのを嫌がり、その事実をごまかすために怒りが湧き上がってくる。だから怒っている人に「なぜ怒っているのか」と問うても、本人もうまく説明できないことが多い。怒りの根っこにある無力感に、自分では気付いていないからだ。
この構造を理解すると、冒頭で紹介した若手社員の怒りの正体が見えてくるだろう。
彼ら彼女らは、おそらく「一生懸命やっているのに、うまくいかない」という状況にある。試しても結果が出ない。そこへ上司からの指摘が飛んでくる。そして、何をどうすればいいのか分からないまま動き続ける――。
こういった無力感が積み重なった状態で、
「進ちょくはどう?」
「何か分からないことある?」
と問いかけられると、ついつい表情が険しくなる。
「どうしたら目標達成するか分からないんだから、進ちょくがいいはずはない!」
「何が分からないかも、分からない!」
こう、イライラをにじませるのだ。決して「怒りっぽい性格」ではない。「どうすればいいか分からない状態に置かれている」ことが一番の問題なのだ。
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