なぜ「生ノースマン」は800万個も売れたのか 看板商品をもう一度つくり直した理由火曜日に「へえ」な話(1/4 ページ)

» 2026年05月05日 07時00分 公開
[土肥義則ITmedia]

 東京駅の構内をうろうろしていると、「北海道○○」などと書かれた紙袋を抱えた人を見かけることがある。中身はたいてい決まっていて、「白い恋人」や「マルセイバターサンド」といった王道土産だ。

 その一方で、少し変わったものを手に入れた人は、どこか誇らしげにも見える。会社の同僚に配ると「それ、どこで買ったの?」と聞かれることが多いからだ。土産選びで、「王道」か「ちょっとした発見」かに頭を悩ませる人も多いのではないだろうか。定番商品はすぐに決まる一方で、初めて見る限定商品や少し珍しい菓子を前にして立ち止まり、「これにしようか」とその場で迷いながら選ぶような場面だ。

 この2択で考えると、例えば、北海道の老舗・千秋庵製菓(札幌市)が手がける「ノースマン」は、長らく「王道」の土産だった。1974年に登場した、パイ生地でこしあんを包んだ和洋折衷菓子で、北海道では知らない人のほうが少ない。だが、その高い知名度が、逆に足かせにもなっていた。

1974年に登場した「ノースマン」(出典:千秋庵製菓、以下同)

 「お客さまも商品も、一緒に年を取っていたのではないか」――。

 こう振り返るのは、2022年に社長に就任した中西克彦さんだ。実際、購入の中心は60代以上。かつて、おじいちゃんやおばあちゃんの家に行けば、必ずといっていいほど仏壇の横に置かれていた。ノースマンは、いわば“生活の中の定番”だったが、時代とともに、そうした風景が少しずつ消えていった。と同時に、若い世代が手に取る機会も減っていったのだ。

 新しいお客を獲得できず、業績は厳しい状況が続いた。コロナ禍がさらに追い打ちをかけ、2021年9月期の売上高は約8億円にまで落ち込んだ。「このままでは倒産するかもしれない」(中西さん)という危機的な状況に追い込まれていた。

千秋庵製菓の本店

 「老舗をどうするか」という話になった場合、2パターンに分かれることが多い。1つめは、伝統を磨き続ける。2つめは、思い切って壊す。ただ、どちらもうまくいかないことがある。1つめは、じり貧になりやすく、2つめは“らしさ”を失いやすいからだ。

 そこで同社は、どんな手を打ったのか。「新商品をつくる」でも「伝統を守るだけ」でもなく、「看板商品をつくり直す」という一手を選んだ。

 こうして、2022年10月に「生ノースマン」が誕生した。

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