ファッションサブスクの収益化は、なぜ難しいのか。最大の要因は、通常の小売やECとは比較にならないコスト構造にある。
一般的なECであれば、商品を保管し、注文が入ったら発送すれば取引は完了する。しかしレンタル型のサブスクでは、発送した後に返却を受け付け、届いたアイテムを1点ずつ検品し、クリーニングや修繕を施した上で再び貸し出すという循環が発生する。
いわば「静脈物流」(消費者から事業者へ商品が戻る物流)を自前で構築しなければならず、通常のEC倉庫では対応できない。天沼氏は「創業当初は月額会費6800円や9800円という水準に対し、1回の配送にかかるコストが6500円ほど。送れば送るほど赤字になる状態がスタート地点だった」と振り返る。
このハードルの高さから、大手企業の参入と撤退も目立つ。AOKIホールディングスは2018年にスーツのサブスク「suitsbox」を開始したが、わずか半年でサービスを終了した。20〜30代の若年層を狙ったものの、実際の利用者は40代が中心となり、既存店舗との顧客の奪い合いが発生。物流を外部委託したことによるコスト増も重なり、黒字化の見通しが立たなかった。
ZOZOが2018年に手がけた「おまかせ定期便」も、約1年で終了している。厳密には月額課金型のサブスクではないが、スタッフが利用者の好みに合わせて服を選び、定期的に届けるという点ではエアークローゼットと共通する。しかし、気に入ったものだけ購入する仕組みゆえに、既存会員による購入率が伸びず、事業継続は困難と判断された。
課金の仕組みこそ異なるものの、両社に共通するのは「継続利用を前提とした体験設計」と「コスト構造の最適化」が十分に詰められていなかった点にある。ファッションサブスクの難しさは、サービスを始めること自体にはなく、続けることにある。
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