興味深いのは、それぞれ個別に話を聞いたにもかかわらず、2人のベテランが語った内容はほとんど同じだったということだ。彼らがこの仕事をするうえで、大切にしている原則や哲学は、以下の3つに集約されている。
(1)「主役にならない」謙虚さを持て
(2)「言われていないクレーム」を想像せよ
(3)マニュアルでは伝えられない「心」を磨け
まず、(1)の重要さを訴えたのは、東京・新宿にある「落合斎場」行事課のベテランスタッフ、山田さん(仮名)だ。行事課とは、火葬にまつわる業務全般を担当する部署で、火葬炉で、ご遺骨をきれいに火葬するための火力を調整するだけではなく、火葬炉前で収骨も執り行う。ここで20年以上のキャリアを積んできた山田さんが後輩を指導する際によく言っているのが、この言葉だという。
「収骨のときには、われわれが遺骨の説明をする場があります。そこでは各自が勉強したり、先輩のやり方をまねて遺骨について昔から言われている話や、遺骨の状態について説明するのですが、『勉強になりました』とか『詳しく教えていただいてありがとうございます』と、すごく反応が良いこともあるので、若手スタッフの中にはそういうふうに盛り上げていくことがベストだと勘違いしてしまう。だから『それは思い上がりだよ』と後輩には伝えています」(山田さん)
なぜ、山田さんがこのような苦言を呈するのかというと、参列者が収骨に立ち会う際の感情は、まさに千差万別だからだ。気持ちの整理がついていない人もいれば、まだ故人の死を受け入れられない人もいる。当然、遺骨の説明なんて詳しく聞きたくない人もいれば、とにかくこの場にいること自体がつらく、早く遺骨を自宅に持ち帰って休ませてあげたい人もいる。そういう心情を感じ取って、それぞれに合った形のサポートをするのが、斎場スタッフの役目だと山田さんは言う。
「収骨の主役はあくまで喪主様やご宗家、参列者の皆さんですので、主役が望むような収骨のスタイルになることがベスト。自分が主役になって場を仕切ることは絶対にやってはいけない。でも、なまじ経験が積み重なっていくと、自分が主役だと勘違いしてしまうときがある。5年目くらいですかね、私もそうでしたから」
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