時価総額世界1位を誇る半導体大手、米NVIDIAのジェンスン・フアンCEOは5月20日(現地時間)、広い顧客基盤を背景にして高成長を維持できるとの見方を投資家に示した。新製品の投入によって、主力のAI向けチップで見込む1兆ドル規模の売上高を上回る可能性があると同氏は述べた。
しかし、同社の株価は時間外取引で1.6%下落した。「ウォール街の予想を上回る2027年度第2四半期(5〜7月)の売上高予測」「800億ドル規模の自社株買い計画」を発表したものの、投資家は競争激化への懸念を強めていることがうかがえる。
NVIDIAは、2027年度第2四半期の売上高を910億ドル(前後2%)と予想した。ロンドン証券取引所の集計による市場予想の868億4000万ドルを上回る水準だ。
同社の決算は、AI市場の健全性を測る指標と見なされている。NVIDIAのチップは世界中の主要データセンターの大半で使用されており、大規模かつ高度なAIモデルの処理を支えているためだ。
市場調査会社米eMarketerのアナリスト、ジェイコブ・ボーン氏は「NVIDIAは再び市場予想を上回る結果を出したが、四半期ごとに好決算を続けているため、現時点で株価に織り込み済みだ」と指摘した。
「焦点は、AIインフラ投資が2027〜2028年にかけて持続することを投資家に納得させられるかどうかに移っている。背景には(NVIDIA製チップが得意とする)AIの学習から推論処理へと需要が移っていること、米Google、米Amazon、米Intel、米Advanced Micro Devices(AMD)などによる競合チップが台頭し始めていることがある」(ボーン氏)
NVIDIAはまた、四半期配当を1株当たり1セントから25セントへ引き上げると発表した。
AIインフラへの投資は引き続き急拡大している。Google親会社の米Alphabet、Amazon、米Microsoftなどの米大手テクノロジー企業は2026年、AI関連に7000億ドル以上を投じる見込みで、2025年の約4000億ドルから急増している。
フアンCEOは決算説明会で、GoogleやAmazonなど「ハイパースケーラー」と呼ばれる大手クラウド事業者よりも高い成長率を維持できるとの見方を示した。データセンター事業において、AI特化型クラウド企業などの新たな顧客層が拡大している点を理由に挙げる。これらの顧客向け売上高は、大手クラウド事業者向け売上高とほぼ同規模に達している上、前四半期比の成長率は大手クラウド事業者を上回ったという。
フアンCEOは「当社はハイパースケーラーの設備投資を上回る成長を実現できるはずだ」と述べた。
NVIDIAの主要顧客は、同社の高価なプロセッサに依存する一方で、AIモデルを動かすための「独自チップ」の開発にも巨額の資金を投じている。これが、NVIDIAが長年維持してきた半導体業界での支配的地位に対するリスクになっている。
NVIDIAは、大手テクノロジー企業だけでなく、IntelやAMDなどの半導体メーカーとも競争している。これらの企業は、AI推論市場向けCPU(中央演算装置)の販売で大きな収益機会を得ている。
対するNVIDIAは、防衛策を実行している。推論処理向けチップを手掛ける新興企業・米Groqの技術を採用した新型CPUとAIシステムを、3月に発表した。
フアンCEOは決算会見で、新型CPU「NVIDIA Vera」によって新たに2000億ドル規模の市場に参入できると述べた。同社は、2027年度末までにVera関連の売上高が200億ドルに達すると見込んでいる。この売上高に、主力AIチップ「NVIDIA Blackwell」「NVIDIA Rubin」の売上高1兆ドル(2025〜2027年予測)は含まれていないとフアンCEOは説明した。
「Veraは、BlackwellおよびRubinによる1兆ドル規模の売上高に次ぐ第2の柱になると見込んでいる。全ての顧客がVeraに強い関心を示している」(フアンCEO)
一方で、同氏は「私の感覚では、AI向けプラットフォーム『NVIDIA Vera Rubin』の製品ライフサイクル全体を通じて供給制約が続くだろう」とも認めた。NVIDIA Vera Rubinは、CPUとGPU(画像処理装置)を組み合わせた新たな技術プラットフォームで、2026年内に提供予定だ。
世界的なメモリチップ不足が続く中、NVIDIAはサプライチェーンの混乱を回避して製品を供給するための投資を積極化している。同社は5月20日、2027年度第1四半期(2〜4月)末時点の製品供給が1190億ドルとなり、前四半期の952億ドルから増加したと明らかにした。
第1四半期の売上高は816億2000万ドルで、ロンドン証券取引所の集計によるアナリスト予想平均の788億6000万ドルを上回った。
同四半期のデータセンター部門売上高は752億ドルで、市場予想平均の728億ドルを上回った。調整後の1株利益は1.87ドルとなり、市場予想の1.76ドルを超えた。
同社は、300億ドル規模のクラウド利用契約を結んだことも明らかにした。前四半期の270億ドルから増加しており、同社は研究開発を支援する目的だとしている。これは「バックストップ」(損失補填)に相当する可能性が高いと指摘するのが、金融サービスを手掛ける米Seaport Securitiesでアナリストを務めるジェイ・ゴールドバーグ氏だ。クラウド事業者が運用するNVIDIA製ハードウェアを用いたシステムにおいて、余剰が発生した場合にNVIDIAがそのコストを補填する仕組みを意味する。
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