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「あの人、老害だから」で片付けていないか 職場の“年齢ラベリング”が招くリスク働き方の見取り図(1/2 ページ)

» 2026年05月27日 07時00分 公開
[川上敬太郎ITmedia]

 後進に道を譲ったはずの年配者が、思い通りになっていないとアレコレ口を出す。後進が言われた通りに動いても、しばらくすると「それじゃダメだ!」と再び口を出して困惑させる――。

 年配者が周囲にネガティブな影響を及ぼす振る舞いは「老害」などと呼ばれます。老害という言葉が使われる場面は家庭や友人同士での会話などさまざまで、職場もその一つです。

 しかし、老害呼ばわりされて喜ぶ人などいません。

 それにもかかわらず、日常会話や職場でこの言葉が広く使われているのは、なぜなのでしょうか。そこから見えてくるのは、組織を硬直化させるリスクです。この言葉を安易に使うことが、組織の成長をどう阻害し、マネジメントを機能不全に陥らせるのか。事例を基に考えていきます。

photo01 「老害」という言葉が職場にもたらす影響を考える(提供:ゲッティイメージズ、以下同)

著者プロフィール:川上敬太郎(かわかみ・けいたろう)

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ワークスタイル研究家/しゅふJOB総研 研究顧問/4児の父・兼業主夫

愛知大学文学部卒業。雇用労働分野に20年以上携わり、人材サービス企業、業界専門誌『月刊人材ビジネス』他で事業責任者・経営企画・人事・広報部門等の役員・管理職を歴任。

所長として立ち上げた調査機関『しゅふJOB総研』では、仕事と家庭の両立を希望する主婦・主夫層を中心にのべ5万人以上の声をレポート。

NHK「あさイチ」「クローズアップ現代」他メディア出演多数。


「老害」と言われる4つの振る舞い、実際は……?

 「ソフト老害」という言葉が新語・流行語大賞にノミネートされたのは、まだ記憶に新しい2024年のことでした。40代などのミドル層が、良かれと思い、全体のバランスをとりながら、柔らかい姿勢で説得しようとする振る舞いが若手層にとって妨害行為になっている、といった様子を指します。

 老害と聞くと、40代よりもっと上の高齢者層をイメージする人が多いため、ミドル層でも老害になり得るという指摘は新鮮かつ衝撃的でした。ソフト老害について取り上げた日本能率協会のコラムでは、老害は「組織の硬直化につながる問題を指した言葉」だと指摘した上で、考えられる行動の例として以下の4点を挙げています。

  • 自分の意見を押し付ける
  • 過去の武勇伝ばかり語る
  • 相手の話を聞かない
  • 新しいものを否定する

 これらのケースに沿って、実際に見聞きした事例をいくつか記してみます。

 まず「意見を押しつける」ケースについて例を挙げます。会議の中でAさんは、新人社員に「力を何パーセント出し切れているか」を尋ねました。新人社員は、一生懸命働いているものの、控えめに「50%くらいかもしれません」と答えました。するとAさんは怒気を含んだ口調で「だったら給料を半分返すべきだ」と持論を述べ、新人社員は固まってしまいました。

 次に「過去の武勇伝」のケースです。「営業はとにかく顧客のところに何度も足を運ぶこと」がモットーのBさん。「自身は何度断られてもめげずに訪問し続けた」「10回以上足を運んで受注できなかった顧客はいなかった」と、過去の苦労話を繰り返しさまざまな人に話しています。

 続いて「相手の話を聞かない」ケースです。仕事熱心で、いつもオーバーワーク気味のCさん。「そんなにもスケジュールを詰め込むと体が持たない」と度々忠告されましたが、自分なりのペースを優先し、変わらずスケジュールを詰め込み続けました。燃え尽きたり、体に変調をきたしたりしてしまうのではないかと周囲はハラハラしました。

 最後に「新しいものを否定する」ケースです。会社の方針でペーパーレス化を推進し、資料の管理をオンラインシステム上に置き換えることになりました。しかし、Dさんは抵抗感がある様子です。紙資料の場所が全て頭に叩き込まれており、並行稼働期間中もオンラインシステムを使用せず紙を優先し続けました。

 紹介した振る舞いは、どれも老害と言われそうです。自身の周りで、A〜Dさんに似た事例を知っている人も少なくないかもしれません。しかし、実はどの事例も当時20〜30代だった人たちによる言動です。老害と言われそうな振る舞いであっても、行動主体が必ずしも年配者だとは限りません。

「老害」扱いする3つの問題 組織硬直化のリスクとは

 職場で老害という言葉を使用することには、少なくとも3つの問題があります。1つ目は、先の事例で示したように、その振る舞いが年齢に起因するものとは言えないことです。A〜Dさんが年配者なら「老害」とされ、若手ならそう見なされない――。もし年齢の違いだけで判断されるのだとしたら、強い違和感があります。

 必ずしも年配だから意見を押し付け、過去の武勇伝を語り、話を聞かないというわけではありません。年齢を重ねることで経験値が高まり、過去の記憶に基づいて話す場面が増える傾向はあるかもしれません。しかし、「年配だからそのような振る舞いをする」と結び付けるのであれば、それはエイジ(age:年齢)ハラスメントに当たります。

 次に、ダイバーシティの観点から見た問題です。A〜Dさんの振る舞いを掘り下げてみると、必ずしも間違いとは言い切れないところがあります。Aさんの「給料を半分返すべきだ」という発言は、一歩間違えればパワハラと受け取られかねません。しかし、Aさんと新人社員の間には信頼関係が構築されていました。

 最初はAさんの言葉に固まってしまった新人社員でしたが、熱い思いはしっかり届いていたようです。忠告に耳を傾け「堂々と100%やり切っていると言えるようになりたい」と仕事に対してより前向きになりました。

 営業で「顧客のところに足を運ぶこと」の大切さを説いたBさんの言葉は、タイパ重視の風潮の中で時代遅れと受け止められるかもしれません。いまはオンライン商談やメール、チャットなど営業手法も多様化しています。

 しかし、時代が変わっても営業において顧客との関係構築が重要な点は変わりません。接触回数を重ねるほど親近感や興味を抱きやすくなる傾向は「ザイオンス効果」(単純接触効果)として知られています。実際に足を運ぶ手法がベストなのかは別としても、Bさんの武勇伝の根底にある顧客と会う回数を大切にする考え方は、時代を超えて通じる面があります。

 スケジュールを詰め込み過ぎたCさんは、周囲に心配されながらも担当プロジェクトを見事に完遂しました。体を壊すこともなく、詰め込み過ぎに見えたスケジュールの中に息を抜く時間をこまめに見いだすなど、うまく自分のペースでコントロールできていました。

 紙資料の場所が全て頭に入っていたDさんは、オンラインで検索している誰よりも早く資料を見つけることができました。その業務遂行能力は、オンラインシステムへ完全移行した後の生産性を検証する際の基準の一つにもなりました。一方、主業務は紙資料を用いてこなしながらも、合間に新しいシステムの操作は習得していました。

 仮にA〜Dさんが年配者だったなら、「老害」の一言で片付けられていたかもしれません。そうなれば、振る舞いの意義や陰の努力に目が向けられることもなくなります。多様な考え方や価値観を取り込むことの大切さを踏まえると、老害呼ばわりして排除する姿勢は、組織を発展させていく上で大きなリスクです。

 3つ目は、人権上の問題です。内閣府が2022年に実施した「人権擁護に関する世論調査」では、高齢者に関する人権問題についても尋ねています。その中では、「高齢者が邪魔者扱いされること」が31.7%、「働く能力を発揮する機会が少ないこと」が28.4%挙げられました。老害などと、老いていることを引き合いに出して害だと決めつけるのは、人権侵害に当たりかねない行為です。

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