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新卒より生成AIがいい──初任給バブルの裏で、大手企業が進める“超厳選採用”は何をもたらすのか河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(2/2 ページ)

» 2026年05月29日 07時00分 公開
[河合薫ITmedia]
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生成AI時代の「優秀な人材」とは

 では、企業が求める「よっぽど優秀な人材」とはどのような人を指すのか。かつての新卒市場における「優秀さ」とは、高学歴であることや素直さ、協調性、つまり「色に染まりやすいポテンシャルの高さ」でした。

 しかし、企業がグローバル化し、外国人の従業員が身近になった今「空気を読むこと」や「組織への同質性」を前提とした優秀さの定義は、完全に過去のものとなりました。

 新卒であっても例外なく、自ら付加価値を生み出す自律性が求められています。具体的には「自律的に生成AIを使いこなし、入社1日目から自力で付加価値(利益)を生み出せる、自立したビジネスパーソン」です。

 ちょっと前に「有能人材」という言葉を企業は好んで使っていましたが、その実力主義の波が、ついに新卒採用にまで押し寄せてきたということです。要するに企業は、莫大(ばくだい)な時間とコストがかかる「育成」というステップをスキップし、最初からビジネスパーソンとして完成された素材だけを、おいしく手に入れようとしているわけです。

kk 写真キャプション(提供:ゲッティイメージズ)

 現在、多くの企業がインターンを「優秀な学生をいち早く囲い込み、AI課題でふるい落とすための選別ツール」として都合よく使っています。しかし、これでは単なる就職活動の前倒しであり、学生をさらに疲弊させるだけです。

 企業が新卒に「自立したビジネスパーソン」であることを求めるならば、インターンもまた、単なる試験会場ではなく、学生が社会のリアルな課題に触れ、自らのポテンシャルを「解放・拡張する場」へとシフトしなければなりません。大学での学業(理論)と、企業のインターン(実践)が真に結び付いてこそ、若者は社会で通用する武器を身に付けられます。

 しかし、そうした本質的な視点を欠いたまま、企業が単に「新人教育を放棄」し、一握りの超エリートだけを一本釣りする社会の先に待つのは若年層の「構造的漂流」です。

 現在、大学生の2人に1人が奨学金を受給しています。3月卒業の場合、翌10月から返済がスタートする現状を鑑みれば、雇用という「返済の原資」が断たれることで起きる若者の生活破綻という問題に早急に着手するべきでしょう。

 「新卒」という唯一の切り札を無効化する以上、中途採用の強化や履歴書の空欄を問題視しない「キャリアの多様性を認める寛容さ」、ギャップイヤー(留学・ボランティア・インターンシップなどの社会を体験する制度や期間)の積極的な導入と、そこでの経験を正当に評価する仕組みなど、新たなキャリアのインフラ構築は不可欠です。

 そして、こうした「レール外の若者」の増加こそが、実は大手企業との戦いに挑む中小企業やスタートアップにとって、未曾有のチャンスをもたらすことになるのです。若者の生活不安に寄り添う中小企業やスタートアップが、次の時代を支える「隠れた優秀層」を独占して躍進する、新しい時代の幕開けなのかもしれません。

河合薫氏のプロフィール:

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 東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。

 研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)、『他人の足を引っぱる男たち』(日経プレミアシリーズ)、『定年後からの孤独入門』(SB新書)、『コロナショックと昭和おじさん社会』(日経プレミアシリーズ)『THE HOPE 50歳はどこへ消えた? 半径3メートルの幸福論』(プレジデント社)、『40歳で何者にもなれなかったぼくらはどう生きるか - 中年以降のキャリア論 -』(ワニブックスPLUS新書)、『働かないニッポン』 (日経プレミアシリーズ) 、『伝えてスッキリ! 魔法の言葉』(きずな出版)など。

 新刊『「老害」と呼ばれたくない私たち  大人が尊重されない時代のミドル社員の新しい働き方』(日経BP 日本経済新聞出版)発売中。


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