FP技能士センター正会員。中央大学卒業後、フィンテックスタートアップにて金融商品取引業者の設立や事業会社向けサービス構築を手がけたのち、広告DX会社を創業。サム・アルトマン氏創立のWorld財団における日本コミュニティスペシャリストを経てX Capital株式会社へ参画。
ブシロードは5月27日、連結子会社である新日本プロレスリングの保有株式全てをテレビ朝日ホールディングス(HD)とサイバーエージェントの2社に譲渡すると発表した。
譲渡日は6月30日、譲渡価格は合計約35億9700万円。内訳はテレビ朝日HDが約12億1600万円、サイバーエージェントが約23億8000万円だった。
これにより、テレビ朝日HDとサイバーエージェントはそれぞれ46.3%の新日本プロレス株式を保有し、同社はテレビ朝日HDの連結子会社となる。
ブシロードが親会社を務めた約14年間で、新日本プロレスは経営破綻寸前から国内最大手プロレス団体へと完全復活した。なぜいまこのタイミングでブシロードは新日本プロレスリングを手放したのか。そして、テレビ朝日とサイバーエージェントはなぜ、プロレス団体を買ったのか。
ブシロードが新日本プロレスを買収したのは2012年2月。前オーナーだったユークスからの取得額は5億円だった。買収後はカードゲーム事業で培ったプロモーション力を投入し、棚橋弘至氏、オカダ・カズチカ氏ら新世代スターを売り込んだ。
それだけでなく、ブシロード体制下の新日本プロレスは海外巡業の拡大、動画配信「新日本プロレスワールド」(現・NJPW WORLD)の立ち上げを矢継ぎ早に実行。新日本プロレスの2025年6月期の売上高は47億5530万円、営業利益が約1億7230万円にまで成長した。
今回の譲渡価格36億円は14年前の取得価格5億円の約7倍であり、事業投資としては大成功という結果を収めた。
ブシロードが売却した背景としては、同社がトレーディングカードゲームを本業とする会社であり、配信・放送インフラを自前で持たない点がある。ここから先のスケール拡大は別の親会社の方が適しているという冷静な経営判断だったと考えられる。
テレビ朝日にとって、新日本プロレスは決して新しいパートナーではない。同社系列で1969年7月に放送開始した番組『ワールドプロレスリング』は、1973年4月から新日本プロレス中継となり、地上波プロレス中継の代名詞となってきた。
番組自体は2024年7月で開始55周年を迎えた。アントニオ猪木氏、長州力氏から続くスター系譜の歴史を、テレビ朝日は全て自社映像資産として保有しているのだ。
一方、テレビ朝日の広告収入は若年層の視聴離れやネットとの競合の煽りを受けて、中長期で逓減している。テレビ朝日HDが推進中の中期経営計画「START UP テレ朝!! 経営計画 2026-2029」は、コンテンツ・IPの自社内製化とグローバル展開を中核に据えており、新日本プロレスの子会社化はこの戦略の象徴的なピースになるだろう。
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