最後に、AIには代替できない、企業が積極的に採用すべき人材像を整理しておきたい。
第1に、「問いを立てる」力のある人材だ。
問いの立て方までAIに質問していたら、いつまで経っても上流工程の仕事はできないままだ。
第2に、深い業界知識と審美眼を持つ人材だ。
AIが生成した資料は、一見もっともらしく整っている。しかし実運用のエラー処理や現場の暗黙知が欠落していることが多い(これは本当に痛感する)。現場のプロセスや業界特有のルールを深く理解し、AIの出力が本当に使い物になるかを評価(クリティカルシンキング)できる人材が重宝される。
第3に、最終的な「責任」を引き受けられる人材だ。
少なくとも今のところ、AIが自律化したとしても、成果物に対する法的・社会的責任を負うことはできない。障害が起きたとき誰が説明するのか。事故の際に誰が意思決定するのか。この責任を担えることが、人間に残される最大の価値の一つだろう。
第4に、変化に柔軟に適応する人材だ。
AI時代に関わらず、いつの時代も柔軟性は求められる。昨日まで熟練した人間がやっていたことが、明日にはAIによって自動化される、そんな時代になった。過去の成功体験に固執する人材は生き残れない。学び続け、習得したスキルを変化する仕事に結びつけ直す力が求められる。
AIが速く正確にこなせる作業を奪い合うのではなく、AIにはできない判断や責任の領域で力を発揮できる人材かどうか。これが、今後の採用基準の核になっていくだろう。
AIの普及は、単なる業務効率化にとどまらない。日本企業が長年依存してきた「新卒一括・ポテンシャル採用・OJT育成」という雇用スタイルを、根底から揺るがしている。
「とりあえず採用して、現場の雑務を通して後から育てる」
という発想などしていたら、企業は生き残れない。なぜなら日本企業は、いったん採用した以上、その雇用を守ろうとする文化が根強いからだ。「問いを立てられない」「経験が不足している」「責任感が足りない」「変化に対応できない」といった人材が組織に増えれば、組織の機動性は大きく落ちていく。
多くの企業は、冒頭の人事部長のように、一度立ち止まって「問い直す」ことから始める必要があるだろう。
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