別荘というと、富裕層が軽井沢などに所有して、避暑に訪れる。かつてはこんなイメージが主だったのではないか。
滞在できるのは年間でも数十日程度。維持管理も大変そうだ――別荘とは縁のない筆者でもそれくらいは想像がつく。そうしたイメージがあるだけに、シェアリングエコノミーの考えが広がる中で、別荘を複数人で利用するシェア型・サブスク型サービスの登場は、仕組みとしてイメージできた。
ところが昨今注目を集めるサービスは、単純なシェアやサブスクにとどまらない設計になっている。
NOT A HOTEL(ノットアホテル、東京都中央区)が展開するサービスは、最小で年間10泊分から所有権を購入可能だ。自身が使わない日数分はホテルとして貸し出すこともできる。
購入したオーナーは1カ所の別荘だけでなく、全国のノットアホテルの別荘を相互利用できる。「所有権」の購入となるため、売却・相続も可能。ホテルとも別荘とも異なる、その中間のようなサービスだ。
同社の代表取締役 Co-CEO(共同最高経営責任者)である江藤大宗氏は、別荘を富裕層だけのものではなく「より多くの人が利用できる形を目指した」と話す。
創業から6年で契約高は約800億円、オーナー数は約1200人まで拡大した。どのような層が購入しているのか。同社が描くサービスの未来図とは。
石垣、三浦、北軽井沢、那須――。
同社は現在、これらを含む全国10拠点に39部屋を開業(2026年6月時点)し、2029年度までに開業予定を含む約30拠点への拡大を計画する。これまで開業済みの中で最も高額なものが、広島県三原市・佐木島の物件で、年30泊分の所有権が約4億円となっている。
実際に、どのような層が購入しているのか。
同社の設立は2020年。サービスを開始した当初の購入者は、30〜40代の起業家や金融業界出身者など、比較的若く資産形成を進めた層が中心だったが、現在はその裾野が大きく広がっているという。
象徴的なのが若年層の変化だ。
「以前なら、新卒で頑張ってお金をためたらフェラーリを買いたいと考えていたような若い人が、その代わりにノットアホテルを選ぶケースも出てきている」と江藤氏は話す。
一方で、引退後の生活や、子や孫との時間を見据えた高齢世代の利用も増えている。
職業も多様化しているという。起業家や投資家だけでなく、高所得の会社員や士業、開業医、地方の企業経営者など、利用者層は年齢・職業の双方で広がりを見せている。
利用者の広がりは金融資産の規模にも表れている。10億円以上の資産を持つオーナーの購買力が大きい一方、江藤氏が特徴として挙げるのは、資産1億円前後の層が購入している点だ。
確かに現在、エントリークラスに位置付ける年間10泊分利用の所有権は、例えば神奈川県三浦市の物件で約2900万円といった価格帯のものもある。ホテル宿泊費の上昇や円安による海外旅行費用の増加もあり「毎回ホテルに泊まるなら購入した方が合理的」と考える人を後押ししているという。
購入者の層が広がった背景について、江藤氏は自社の認知度が高まったこと以上に、社会全体の価値観の変化が大きかったと分析する。
特に同社の創業期に起きた新型コロナ禍の影響が大きかったという。
「富裕層ほど、プライバシーのある場所を持ちたいという優先順位が上がった。家族や親しい友人、会社のメンバーなど、近しい人と過ごす時間を重視する人が増えた」
ホテルでは大人数になると複数の客室に分かれる必要がある。一方、ヴィラタイプであれば3世代が一つの空間で過ごせる。こうした利用シーンが支持を集めたという。
ライフスタイルの変化は一時的な流行ではなく「文化として定着し始めている」と江藤氏は見る。「流行のようなものから、文化へと変化していく感覚に近い」
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