年会費4万9500円が、8万2500円に引き上げられた──。
「Marriott Bonvoyアメリカン・エキスプレス・プレミアム・カード」は、マリオット・インターナショナル(以下、マリオット)とアメックスが共同で発行する提携クレジットカードだ。入会するだけで通常25泊以上の宿泊が必要なゴールドエリートのステータスが自動付与され、100円につき3ポイントが貯まる。宿泊以外の日常の支払いでもポイントが積み上がるため、旅行好きのビジネスパーソンを中心に支持を集めてきた。
2025年夏、そのカードの改定内容が公表されると、旅行系コミュニティーやSNSには「改悪」という言葉が飛び交った。年会費は約1.7倍となり、継続特典として無料宿泊が付与される条件も、年間利用額150万円以上から400万円以上に引き上げられた。プラチナエリートへの到達条件は年間500万円利用に設定された。値上げ幅が大きかっただけに、改定前のカードを使い込んでいた層ほど反発は強く「解約を検討する」という声が相次いだ。
マリオット側は値上げと同時に特典の強化も打ち出した。無料宿泊の付与上限ポイントを5万から7.5万ポイントに引き上げ、保有ポイントを上乗せして使えるトップアップの仕組みも導入した。
同社はカードを継続利用すれば以前より価値が高くなる設計だと説明。「値上げ」か「再設計」か──評価は割れたまま、改定から半年が過ぎた。会員数はどう動いたのか。マリオット・インターナショナル アジア太平洋地域(中国を除く) コマーシャルセールスオフィサー(CSO)のジョン・C・トゥーミー氏に、改定の狙いとその後の反響を聞いた。
──年会費の引き上げと同時に、特典も変えました。その狙いを教えてください。
値上げだけではありません。継続特典の無料宿泊上限を5万から7万5000ポイントに引き上げ、手持ちポイントを上乗せできるトップアップの仕組みも加えました。以前は5万ポイントの枠内で使うしかなかったものが、保有ポイントを足すことでより高価格帯のホテルに充てられるようになった。ポイントの柔軟性が上がり、使用価値そのものが高まっています。
年会費が上がった分、受け取れる価値も引き上げた。会員の皆さんにもっとカードを使っていただくための設計です。
──ゴールドからプラチナへの到達条件が、年間400万円から500万円に引き上げられました。
カードをより多く使うインセンティブにするためです。500万円を使えばプラチナに上がれる。プラチナになればポイントがさらに貯まり、より多くのベネフィットを享受できます。
毎日の買い物や食事でカードを使うたびにマリオットのことを考えていただける。到達条件の見直しによって、単にポイントを貯めてもらうだけでなく、エリートレベルの会員を維持していきたいと考えています。
──実際、改定後の会員の動きはどうでしたか。
条件を変えたとき、継続しないという選択をされる会員が一定数いることは事実です。一方で、新たな条件を見て入会される方もいる。最初の数カ月は多少の増減が生じますが、それはカードを刷新するたびに必ず起きるパターンです。市場が受け入れると、成長軌道に戻っていくと考えています。
今年の1月、2月の新規カード会員数は前年を上回っており、これまでに加入したことのない新規の方が多く入ってきています。トータルでも昨年超えの水準で推移しています。
──値上げで数よりも質を重視する方針に転換し、会員を「選別」する意図があったのではないですか。
カード会員であれ、無料会員であれ、マリオットを選んでくださっている時点で、全員が大切な会員です。その上で、より多くの方に加わっていただきたい。数と質、どちらか一方ではなく、両方を追い続けるというのが私たちのスタンスです。
──そもそもMarriott Bonvoy自体と、アメックス提携カードはどう位置付ければいいですか。
Marriott Bonvoy自体は誰でも無料で入会できます。マリオット系列のホテルへの宿泊や食事でポイントが貯まり、ポイントは無料宿泊などに使えます。
アメックスカードはそのエコシステムの延長です。カードを持つと自動的にゴールドエリートのステータスが付与され、100円につき3ポイントが貯まります。宿泊しなくても、日々の買い物や食事でポイントが積み上がっていく。日常のあらゆる支払いがマリオットとの接点になる仕組みです。
──カード会員は、通常のBonvoy会員とは別の層ですか。
同じエコシステムの中にいます。無料会員もカード会員も、どちらもBonvoy会員です。ただ、日常決済でもポイントを稼げる分、カード会員のほうが貯まるスピードが早い。ポイントが早く貯まれば、無料宿泊などのベネフィットも早く享受できます。
毎日の支払いでマリオットのことを考えながら過ごしてくださっているカード会員は、Bonvoyエコシステムの中でも、とりわけロイヤリティの高いエリートメンバーです。
年会費と到達条件を引き上げてカードの価値を上げる一方で、無料のBonvoyは誰にでも開かれたまま。そして、楽天などをはじめとしたパートナーシップで会員基盤を広げ続ける。ハイエンドを絞り込みつつ、裾野は広げる──同社はこの戦略を軌道に乗せている。改定直後の離脱も折り込み済みで、1月、2月の新規会員数はすでに前年を上回った。
トゥーミー氏は「数も質も、両方だ」と繰り返した。その言葉が強がりでないことは、今年前半の数字が裏付けつつある。
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