この記事は、書籍『大阪ビジネス』(大野雄斗/クロスメディア・パブリッシング)に、編集を加えて転載したものです。なお、文中の内容・肩書などは全て出版当時のものです。
大阪は「食い倒れの町」であり、「天下の台所」です。しかし、大阪は、ただ食品を消費しただけではありません。「消費地」や「物流拠点」にとどまらず、食品を加工して付加価値を付けることも行ってきました。新鮮な食材が集まる場所でありながら、なぜ「加工品」の産業が発展したのでしょうか。その答えは、大阪の商人が直面した歴史的な課題にあります。
大坂には江戸時代から全国の米や昆布などが集まってきたことで、それらを長期保存し、安定供給する必要が出てきました。例えば、北前船が日本海航路を渡って大阪に上質な昆布を輸送していたため、大阪にはたくさんの昆布が集まりました。
その昆布は、そのままの形だけでなく、「だし昆布」や「佃煮」「とろろ昆布」や「おぼろ昆布」といった加工品として進化しました。単においしいだけでなく、運搬効率を高め、調理の手間を省くという合理的な目的が加工技術を発達させました。こうした背景もあり、意外にも大阪は昆布の消費量が全国上位なのです。
その後の大阪は「粉もん文化」が定着し、食文化を支えるための専門的な加工産業も発達していきます。例えば「ソース産業」。たこ焼きやお好み焼き、串カツに欠かせないソースは、イカリソースなど有名メーカーが大阪を拠点としています。
ほかにも、インスタントラーメンや固形ルウのカレーなどが誕生します。こうした発明は、単に調味料をつくるだけでなく、おいしいものを全国どこでも同じように食べることができるという、おいしさの「一般化」を進める役割を担ってきました。
大阪のビジネスを一言で表すなら、「シビアな合理主義」です。江戸の料理が「見栄や粋」を重視して濃い味付けや見た目にこだわったのに対し、大阪は「味とコスパ」を重視しました。「見た目が華やかでも、不味かったら金返せ」というのが大阪の消費者心理です。その結果、大阪の食品企業は安くて、おいしくて、合理的な商品開発に命を懸けることになります。
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