現場スタッフは、業務端末でAI副店長にチャット形式で質問する。6月1日からの本格導入からまだ日は浅いものの、店舗には早くも目に見える変化が起きているという。
1つ目は「現場の心理的ハードルの解消」である。「今の若い世代は、自分の知識不足が露呈するのを恐れたり、忙しい先輩の手を煩わせるのを申し訳なく思ったりして、質問を尻込みしてしまう傾向がある」と高島氏。AI副店長が最初の受け皿となったことで、若いスタッフが積極的に質問し、答えを引き出す機会が増加した。
「その結果、これまで寄せられていた細かい質問が減った。私に相談が来るのは、本当に重たい判断が必要な案件や最終ジャッジに絞られ、店長としての実務に集中できている」(高島氏)
2つ目は「現場の主体的な行動とモチベーションの向上」だ。同社では半期ごとにスタッフが自身の「実行計画」(目標)を策定している。「自分のやり方に加え、AI副店長に聞いて出てきたアドバイスを業務に取り入れる」といった目標を自発的に書き込むスタッフが目に見えて増えているという。
「AI副店長に依存して、現場スタッフが思考を放棄するのではないか」という懸念に対して、金丸氏は開発段階から先手を打っていた。「AI副店長の回答ロジックは、ただ正解を与えるのではなく、最後に必ず『まずは自分で考えて実践してみよう』と、一歩踏み出させる工夫をしている。ヒントを基に本人が行動することで、結果として教育のスピードアップと、自律的な思考力の育成につながっているのでは」(金丸氏)
高島氏はAI副店長を「壁打ちが非常に得意」と評価する。印象的だった事例として挙げたのが、試着室での接客だ。
顧客が試着したTシャツが明らかに小さかった場合、AI副店長は「笑っちゃだめだよ」と前置きした上で「着心地や動きやすさを確認しながら、サイズについて自然に話を広げよう」と助言したという。「『少し小さいですね』と伝えるのではなく、『動きにくくありませんか』という聞き方を提案してくれ、私自身も参考になった」(高島氏)
また、AI副店長は「初めて売り場に立つが、どう声を掛ければよいか」「接客前にどんな心構えを持てばよいか」といった、マニュアルには書き切れない相談への対応にも活用されているという。高島氏は「接客経験の浅いスタッフにも手取り足取り教え、一歩ずつ一緒に進んでくれる“伴走者”のような存在だ」と話す。
女性駅員がデジタル人材に転身 JR西、コロナ禍の“危機感”から始まった全社DXの舞台裏
「仕事は楽な方がいい」 ワイン一筋から「デジタル人材」に大変身 キリンDX道場でベテラン社員が学んだことCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング