FP技能士センター正会員。中央大学卒業後、フィンテックスタートアップにて金融商品取引業者の設立や事業会社向けサービス構築を手がけたのち、広告DX会社を創業。サム・アルトマン氏創立のWorld財団における日本コミュニティスペシャリストを経てX Capital株式会社へ参画。
2026年7月、クレジットカード売り上げの早期決済代行を手掛ける全東信(大阪市)が破産した。帝国データバンクによると負債は約1151億円に上り、同月時点で今年最大だという。
全東信の発表では、加盟店数は20万店舗を超える(2017年時点)。多数の加盟店の資金繰りを揺るがし、融資していた東和銀行など複数の地方銀行(地銀)に焦げ付きが生じている。さらに、少なくとも20年前から粉飾決算をしていた疑いが破産後に浮上した。
この件を「ある決済代行サービス1社の破綻」で片付けるのは早計だ。全東信が担っていた「ファクタリング」(早期決済代行)という業態そのもの、そしてそれを取り巻く「規制の空白」に目を向ける必要がある。
ファクタリングとは、企業が持つ「売掛債権」を買い取り、支払い期日より前に現金化するサービスだ。飲食店の場合、クレジットカード決済で得た売り上げは、カード会社から入金されるまで数週間かかる。全東信は、入金分を立て替えることで店に早期入金し、手数料を得ていた。
仕入れや家賃の支払いが先に立つ中小事業者にとって、売り上げを素早く現金化できる仕組みは資金繰りの生命線だ。ファクタリングには、利用者とファクタリング会社だけで完結する「2社間」と、売掛先も交えて債権譲渡を通知する「3社間」がある。前者は取引先に知られず資金化できる手軽さから利用が多い。
そんなファクタリングの市場は急拡大している。矢野経済研究所が2026年に発表したファクタリングを含む「補完金融・資金調達支援ソリューション」市場の統計によれば、同市場は2024年度で5436億円、2030年度には2.9兆円規模へ拡大する見通し(2024〜2030年度の年平均成長率は32.6%)で、中でもオンライン完結型の「デジタルファクタリング」が拡大し、2024年度に1000億円を突破した。
銀行が中小・零細事業者への貸し出しに慎重になる中、担保や信用力よりも「売掛債権があるかどうか」で素早く資金化できる点が、ファクタリングが支持される理由だ。全東信のカード決済立て替えも、この早期資金化ニーズを飲食向けに特化させた一形態だった。
問題は、その原資である。カード会社からの入金前に加盟店へ現金を渡すには、日々まとまった運転資金が要る。
全東信はその資金を、主に銀行融資で賄っていた。「銀行から借りて、立て替える」モデルは、手元資金よりも大きな金額を常に回し続けるため、外部からの資金供給が細くなった瞬間に行き詰まる。
全東信は、まさにこの脆さ(もろさ)を露呈した。帝国データバンクによると、全東信の採算はコロナ禍で悪化。2020年3月期に約82億円あった収入は、翌期には約50億円へ急減した。さらに2024年、カード決済を可能にする加盟店契約の審査に通らない事業者と、他人名義で加盟店契約を結んでいた問題が発覚し、社員の逮捕や会社の書類送検に発展した。収益力が痩せ、信用を失い、資金調達が行き詰まって破綻に至ったとみられている。
破綻後に明らかになった事実は、この業態のリスクを一層鮮明にした。報道では、全東信が少なくとも20年前から粉飾決算を続けていたという。手口は、預金残高の水増し(約170億円)、架空債権の計上(約154億円)、実質的に無価値な営業権の過大計上(約88億円)など。加えて、加盟店に支払うべき未払いの立替精算金(約217億円)を帳簿に計上していなかった。
その結果、帳簿上の純資産は2026年3月期に約24億8000万円あったが、粉飾を是正すると約605億円の債務超過だった疑いがある。立て替え原資となる銀行融資を引き出し続けられたのは、この粉飾で「健全な財務」を装っていたからにほかならない。
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