こうした背景から“全東信ショック”は金融機関まで飛び火した。立て替え原資を貸していた地銀に焦げ付きが直撃したのだ。
群馬県の東和銀行は、貸出金80億円について取り立て不能または遅延の恐れが生じたと発表。続いて大光銀行が15億円、高知銀行が12億円、島根銀行が8億円と、地銀の焦げ付き懸念の公表が相次いだ。事態を重く見た金融庁は、同社に貸し出していた地銀や信用金庫の実態調査に乗り出している。
全東信が抱える負債の大半は金融機関からの借り入れとみられる。「原資を銀行融資に頼る」というファクタリング型モデルの構造が、そのまま地域金融への波及路になった。
もっとも、金融機関一行当たりの損失は数十億円規模に分散しており、単一の巨大金融機関に損失が集中したリーマン型のシステミックな危機とは構造が異なる。問題は規模よりも、その「見えなさ」にある。
最大の論点が、この業態の規制だ。ファクタリングは法的には債権の売買であって、金銭の貸し借りではない。そのため、貸金業のような登録も免許も要らない。金融庁は「ファクタリングは、当庁が所掌している事業ではなく、ファクタリング全般を規制する法律はありません」と明言している。手数料に上限はなく、業法に基づく検査も罰則も存在しない。
この“空白”が、全東信ショックをもたらした。定期検査も開示義務もない世界では、財務の偽装は露見しにくい。仮に事実であるとすると、20年に及ぶ粉飾が長く表面化せず、見掛け上の健全性を信じた地銀が、実態は債務超過の相手に貸し込んでいた。
「免許も登録も不要」という手軽さは、裏返せば「誰も実態を継続的に監督していない」ことでもある。
象徴的なのは、この市場の全体像すら正確には把握されていないことだ。前述の市場規模はいずれも民間の推計にすぎない。登録も届け出も要らない自由な商取引であるが故に、誰がどれだけの債権をどのような条件で扱っているのかを、当局は網羅的に把握し切れていないようだ。公的な統計の欠如そのものが、監督の空白を映している。
ファクタリングは、銀行に頼り切れない中小事業者の資金繰りを支える、有用な金融インフラでもある。
だからこそ、その担い手の健全性を誰も継続してチェックせず、利用者保護のルールも整わない現状は危うい。金融庁は偽装ファクタリングへの注意喚起や、収納代行への登録制の検討は進めてきたが、全東信のような早期決済代行やファクタリングそのものを恒常的に監督する枠組みはなお整っていない。
全東信ショックが突き付けたのは「銀行の外側」で膨らむこの金融を、登録制や開示義務によってどこまで監督すべきかという問いである。
全東信の問題が「下流の倒産」や「地域金融の傷」へどこまで姿を変えるか。その答えが出るころには、規制の在り方そのものが問われているはずだろう。
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