ANA(全日本空輸)で「経営層はいったいどちらを向いているんだ?」と思うようなトラブルが発生しました。ことの発端は、5月19日に同社が実施した「運賃体系と予約システムの刷新」です。これに伴い、運賃種別を問わず搭乗前の「オンラインチェックイン」(搭乗手続き)ができないなどのシステムトラブルが多発しました。
ANAホールディングス(以下、ANA HD)は2023年2月、国内線と国際線で別々に運用してきた旅客サービスシステム(PSS)を一元化する計画を発表していました。自社開発の国内線システム「able-D」(エイブル ディー)を、国際線ですでに使っているスペイン・アマデウス社の「Altea」(アルテア)に統合するという内容です。
2026年5月19日搭乗分から、予約記録は完全に新システムへ切り替わり、同じタイミングで国内線の運賃体系も全面刷新されましたが、直後から利用者による不具合報告が相次ぎます。オンラインチェックインの不可、座席指定のバグ、公式Webサイトやアプリの深刻な遅延。さらには、カスタマー窓口への問い合わせメールの返信に「最長2カ月」を要するという、航空会社としては致命的な状況にまで至ったのです。
6月11日、同社は公式Webサイトに「お詫び」を掲載したものの、記者会見を開くことはありませんでした。
一方、6月26日の定時株主総会では、ANA HDの芝田浩二社長が質疑応答の前に5分近くを割き、一連の混乱を釈明し、陳謝したと報じられています。株主からは「現場を見ているのか」「不具合は想定できたはずだ」といった厳しい批判が相次いだそうです。
株主からの批判は全くもってその通りで、学ぶべき前例はあったはずです。例えば、数年前、システム障害を連発して社会問題となったみずほ銀行のケースです。あの時も、システムの不備そのもの以上に、厳しく批判されたのは「トラブルの最前線で顧客の怒りにさらされる現場の職員を放置した、経営層のガバナンスと内向きの姿勢」でした。
今回のANAのシステム刷新でも、全く同じ構図が繰り返されているのではないでしょうか。果たして、ANAが創業以来、何よりも大切にしてきた「私たちの飛行機に乗ってくれる顧客の顔」は、今の経営層の目に映っているのだろうかと、思わざるを得ません。
最前線では、社員たちがシステム不全に怒る顧客の対応に苦慮し、なんとか現場力で乗り切っているのではないでしょうか。
経営層が株主たちに状況を説明し、陳謝するのは当然の責任です。しかし、一番に声を届けるべき「現場」への配慮はどうだったのか。「ANAに乗ろう」「またANAで行こう」と思ってくれる顧客を守り、最前線で会社を支える社員を鼓舞するような、経営トップの真摯な「声」はあったのでしょうか。少なくとも、現場の「顧客」に向けた経営者の「声」はありませんでした。
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