日本で働き始めたころに知った印象的な日本語がある。「メリハリ」だ。
仕事中は仕事に集中し、休む時はしっかり休む。その切り替えを大切にする考え方が、日本では仕事だけでなく、デザインにも生きていると感じたと蔡さんは話す。
「台湾は仕事中でも雑談したり、食事をしたり、昼休みには昼寝をしたりと、一日を通して比較的カジュアルな雰囲気です。一方、日本はオンとオフの切り替えがとてもはっきりしています」
この「メリハリ」はデザインにも通じていた。
例えば、あるサービスにおいてユーザーが最も長く利用する「コアな体験」を成す箇所は時間をかけて設計する。そうではない部分は必要以上に作り込まない。また、情報設計でも「一番伝えたいこと」を見極め、視線が集まるよう優先順位を付ける。
「当時の先輩から教えてもらった言葉ですが、今でもとても印象に残っています」
デザインという仕事の進め方にも両国の違いを感じている。
台湾では「正解を素早く導き出す」ことが求められるという。
「学校教育でも試験で正解を早く出すことが重視されます。その価値観が仕事にもつながっていて、機能性や便利さを第一に考える傾向があります」
一方、日本で学んだ考え方として印象深いのが「守破離」だ。
まず基本を忠実に身に付け、その上で既存の型を破り、自分らしさを加えていく。UIデザインでも、ユーザーが慣れ親しんだ使い方をまず大切にし、その上で独自性を少しずつ加える。そのバランスこそが重要だという。
「時間はかかりますが、デザインでは基礎を大切にすることがすごく大事です」
蔡さんがデザインで特に重視しているのは、人とサービスの「インタラクション」(相互作用)だ。
「ユーザーが操作すると、それに対してサービスが反応する。その体験をできるだけ自然にしたい。日常生活などのアナログな領域で感じられるスムーズな体験を、デジタル領域でも再現できないかを意識しています」
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