蔡さんは台湾企業が日本企業から学べる要素として、日本の「無駄」に価値を見いだす文化を挙げる。
「日本では無駄を悪いものとして切り捨てず、むしろ大事にしているように感じます。一見無駄に見えることも、体験として磨き上げるのがすごく上手だと思います」
例えば、お菓子などさまざまな商品のパッケージ。百貨店などで贈答用として購入すると、店員が丁寧に包装してくれる。
「最初はコストがかかるだけではないかと思いました。でも、商品を受け取って開封するまでも含めてユーザー体験がデザインされているんだと気付きました」
「商品の機能性だけを重視するのではなく、あえて無駄を意図的に作るところに良さを感じました」
また、日本では高齢者や障害のある人を含め「誰もが使えること」を前提にサービスや製品が設計されていると感じるという。一方、台湾では社会全体でITリテラシーが比較的高いこともあり、皆が知っていることを前提にしたデザインも多く見られるといい、アクセシビリティーへの配慮は今後さらに伸ばせる余地があると感じている。
逆に、台湾から日本が学べることとして挙げるのは「デジタル化のスピード」だ。
来日当初は、行政手続きで複数の窓口を回らなければならない場面が多く、不便さを感じたという。「一つの場所で済めばいいのに、何カ所も行かなければならないことがありました」。最近はマイナンバーカードの普及などにより、日本も便利になってきたと感じる。
また、台湾ではデザイナー個人によるブランディングも活発だ。
個人として専門性を発揮し、オンライン講座として販売したり、副業として新たな事業につなげたりする人も少なくない。
一方で、日本では個人がビジネスにするというよりも、会社単位でブログ記事の発信やイベント登壇で社内外に知見を共有する文化が強いと感じている。
台湾では半導体産業を中心に給与水準が上昇している。加えて、昨今の円安状況もあり、海外から働き手を引き付ける日本企業の優位性はかつてに比べて低下している。蔡さんはこの点について「個人の価値観によるところが大きい」と感じている。
「半導体企業はもちろん高収入ですが、その分とても激しい働き方を要求されます。給与よりもワークライフバランスを重視し、旅行や趣味などプライベートも重視する人にとっては、日本は合っているのではないかと思います」
蔡さん自身、休みの時間は、ファンである北海道日本ハムファイターズの試合観戦やサウナ巡りを楽しむ。会社にはサウナ部もあり、社員同士で温浴施設へ出掛けることも多いという。
日本で暮らして約10年。日本で得た経験は、自身の仕事観を大きく変えた。「メリハリ」や「守破離」といった日本で学んだ言葉は、働き方だけでなく、蔡さんのデザインの考え方にも深く根付いている。
結果を素早く追い求める台湾と、基礎や体験を丁寧に積み重ねる日本。それぞれの良さや強みを知るからこそ見えてくる視点は、日本企業が海外人材とともに働く時代に、多くのヒントを与えてくれそうだ。
「報連相より結果が大事」 台湾人が日本企業に抱く“カルチャーギャップ”とは?
「日本は悠長すぎる」 スペック主義・韓国から見た日本企業の“不思議”とは?
「社長賞」2回受賞 ソフトバンク28歳リーダーの「前提を疑い、論点を明確にする」仕事術
広報→IT未経験で情シスに 住友商事「年間12億円削減」の生成AI活用を支える“29歳エース社員”の仕事観Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング