こうした取り組みの成果は、数字でも表れている。勤務時間外の現場対応回数は、導入前と比較して約75%減少した。警報が鳴ったらすぐ駆け付けるのではなく、まずは手元のタブレットで全体の稼働状況を確認し、必要な場合のみ現場に向かえばよくなったためだ。さらに、かつて技術職員3人で対応していた夜間の漏水調査も、非技術職員との共同対応が可能に。結果として夜間の対応回数は50%減少し、技術職員が交代で休日を取得できる環境が整った。
さらに、かつて庁内で「ブラック中のブラック」と呼ばれ、異動希望者がいなかった水道課に、自ら配属を希望する職員が増えつつあるという。
現在、曽於市はシステム開発会社USEYA(大阪市)と共同で、スマートグラスを活用した遠隔支援プラットフォームの開発を進めている。
狙いは「現場対応の省力化」だ。鹿児島県東部という地理的条件もあり、曽於市では水道のトラブルがあった際、専門業者を呼んでも現地到着まで数時間かかることが少なくない。そこで現場の職員がスマートグラスを着用し、リアルタイム映像を専門業者と共有。その場で遠隔指示を受けることで、業者の「一次現場確認のための往復時間」を削減する計画だ。映像などの情報共有には専用アプリを使わず、Webブラウザで表示できるようにすることで、多くの外部事業者とも即座に連携できる汎用(はんよう)性を担保している。
さらにユニークなのは、スマートグラスで撮影した映像をAIで要約し、そのまま「次世代の教材」へと変換する試みだ。
一般的なマニュアルには「正解の手順」しか書かれていない。だが大峯氏は「なぜその判断をしたのか」「何が分からなくて失敗したのか」という現場の試行錯誤プロセスこそが最大のノウハウになると考える。そのため、実際の作業の様子を映像化し、試行錯誤の過程そのものを教材として残す狙いだ。
この開発資金の一部は、企業版ふるさと納税および個人向けふるさと納税を活用して調達を予定している。
人口減少、インフラ老朽化、圧倒的な人手不足――地方自治体や中小企業が直面する課題は重い。曽於市水道課の事例は、多額の費用や高度な専門知識がなくても、現場の「自分たちの業務を楽にしたい」という強い当事者意識があれば、組織も地域も変革できることを示している。
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