退職者が後を絶たず、離職率は83%を超過。人手不足によって約1200万円の赤字を計上していた――看護師の相次ぐ離職を前に、福岡県北九州市で訪問看護ステーションを運営するプーラビダは経営存続の危機を迎えていた。
訪問看護の需要が増え続ける一方で、担い手不足が深刻化している。同社も同様の状況にあったが、わずか数年で離職率を7.7%まで下げることに成功。経営状況も改善し、利益率10%超を2年連続で維持するまでに至った。
改革を主導した代表取締役の浦濱広太朗氏は、自身も現役の看護師であり「デジタルは苦手でした」と話す非IT人材だ。専門知識ゼロから手探りで始めた「独学DX」と、崩壊寸前の組織を救った改革に迫る。
プーラビダが離職率83.3%という危機に陥ったのは2023年ごろだ。約1200万円の赤字を抱えており、経営状態は厳しかった。
「原因は、看護師1人当たりの訪問件数(稼働)の少なさでした」と浦濱氏は振り返る。職員の士気は低く、看護師1人当たりの1日の訪問件数は2件ほどだった。
訪問看護は訪問数が売り上げに直結する仕事だ。浦濱氏によると、一般的な訪問看護ステーションにおける1人当たりの稼働件数は1日4件程度。2件だと利益を生み出せないという。
業界特有の課題もあった。
一つが「人材確保の壁」だ。訪問看護ステーションを開設・運営するためには、看護職員を常勤換算(実際に勤務している職員の労働時間を基に、常勤職員の人数に換算する方法)で2.5人以上置く決まりがある。慢性的な看護師不足の中、この配置基準を維持し続けることは容易ではない。1人でも離職したら、経営の土台が揺らぐことになる。
また、訪問1回当たり報酬単価は国で定められており、自社で価格を自由に設定できない。限られた時間や条件の中で利益を出すためには、生産性向上が必要となる。
「世の中に看護師が足りない中で人を増やすことは難しく、価格を上げることもできない。残る道は、1人当たりの生産性を上げることでした」
そこで浦濱氏が選んだのが、DXで業務を効率化し、看護師が長く働き続けられる職場へとつくり直す道だった。
DXの起点は、コストの見直しだった。社内の書類をまとめて管理するために使っていたグループウェアには、毎月約3万円のランニングコストがかかっていた。どうにか減らせないか――そう思って駆け込んだのが、北九州市のDX相談窓口だ。
相談する中で、求めている機能は「Google Workspace」で代替可能だと判明。使用するツールをGoogle Workspaceへ一本化することに決めた。当時は「Gemini」が登場した時期でもあり、Google WorkspaceとGeminiを組み合わせて活用しやすい点も魅力だった。
しかし、浦濱氏を含め、社内にプログラミングや生成AIの知識を持つIT人材はいない。赤字を抱えている状況で外部のコンサルタントに依頼する選択肢も取れない。
「自分で作るしかない。そう考えて、YouTubeで勉強し始めました」
独学で学びながら、浦濱氏は自身の看護師としての知見を生かし、現場で時間がかかっていた業務を効率化するツールを多数開発した。さらに、それらをまとめたポータルサイトも作成し、職員が使いやすい環境を整えた。
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