店舗網・物流網の整理や独占禁止法上の審査を乗り越えたとしても、それだけで統合への道がひらけるわけではない。双方の企業規模が大きいほど、経営方針のすり合わせに加え、取引先や顧客との関係、企業組織・企業文化など調整すべき事項は多岐にわたる。基本合意に至ったとしても、その後の統合協議が順調に進むとは限らないのだ。
家電量販店の事例だけを見ても、2001年にデオデオとエイデン(現:エディオン)が事業統合に関する覚書を締結した際、当初は参加する方針を示していたベスト電器が最終的に離脱。2007年にはエディオンとビックカメラが経営統合で基本合意したものの、わずか2カ月で白紙撤回となった。
その後、ビックカメラはベスト電器との提携を模索。2007年にビックカメラはベスト電器の筆頭株主となって合弁店舗も展開したが、この提携も2013年に解消した。現在、ビックカメラは子会社化したコジマとの連携を強化している。
今回のヤマダデンキとエディオンの経営統合も、基本合意から約1年をかけて最終契約を締結し、株主総会を経て2027年10月の統合を目指すとしている。それだけ長い準備期間を設けていることからも、この統合が容易ではないことが分かる。
ヤマダデンキとベスト電器の統合時、公正取引委員会は「家電量販店同士の競争」を前提に企業結合審査を行い、その結果、複数店舗を競合他社へ譲渡した。しかし、先述したとおり譲渡された店舗の一部は、その後の競争環境の変化などもあり数年後には閉店に至っている。「競争環境を維持する」という当初の目的をどこまで果たしたのかは、検証の余地がある。
「競争市場」をどこまで広く捉えるべきなのか。そこで本当に守るべき「消費者の利益」とは何なのか。少子高齢化や人口減少を背景に、さまざまな業界で経営統合や業界再編が進みつつある中、公正取引委員会が今回の統合をどのように判断するのかは、単にヤマダとエディオン2社間の問題にとどまるものではない。
近年は、多様な商品を販売するディスカウントストアやECの存在感が高まっている。ドラッグストアも食品販売を強化するなど、流通業界では業態の垣根を超えた競争が激しくなっている。公正取引委員会が「競争市場」をどのように定義するのかは、今後の流通業界全体の再編の在り方にも、大きな影響を及ぼすことになりそうだ。
(撮影協力:淀津昇)
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