出版不況の中、紀伊國屋書店がM&Aをしてまで書店の数を増やそうとしているのはなぜなのか。この理由を探るために、日本出版販売(以下、日販)が行った「出版物販売額の実態2025」を見てみたい。
この調査によると、2024年度の販売ルート別の推定販売額は、書店ルートが7371億円(前年比95.2%)、インターネット販売が2737億円(同96.5%)、電子出版物が7356億円(同102.9%)となっている。書店での売り上げは減少しているものの、今もアマゾンをはじめとするネット販売の3倍弱の規模があることが分かる。また、電子書籍の売り上げは伸びており、書店での販売額とほぼ同じ規模にまで拡大している。
ここで注目したいのは、電子書籍のうち漫画などのコミックが占める比率が9割に達すると言われていることだ。つまり、コミック以外の学術書や実用書、小説などは、依然として書店で購入されているのである。
アマゾンなどのネット販売は、ほしい本をすぐに探せて便利だ。絶版になっていなければ、品切れの心配も少ない。
しかし書店に行けば、どんな本が売れているのか、世間で何が話題になっているのかなど、トレンドの移り変わりが一目で分かる。また、書棚を眺めているうちに偶然目に留まった本から、これまで知らなかった新しい知識を得ることもできる。
これは、利用者の興味や購入履歴をもとに本を提案するネット販売とは異なる機能だ。書店は依然として、良質な本を通して知的刺激を得られる、地域の文化センターとしての役割を果たしているのである。
紀伊國屋書店は、こうした書店が持つ文化インフラとしての機能を強化するために、店舗を増やしていると考えられる。
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