サンリオ、東映アニメは“米IT大手級”の利益率 “サブカル”は「モノづくり大国」の次代を担えるか古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(1/2 ページ)

» 2026年08月03日 07時00分 公開
[古田拓也ITmedia]

筆者プロフィール:古田拓也 株式会社X Capital 1級FP技能士

FP技能士センター正会員。中央大学卒業後、フィンテックスタートアップにて金融商品取引業者の設立や事業会社向けサービス構築を手がけたのち、広告DX会社を創業。サム・アルトマン氏創立のWorld財団における日本コミュニティスペシャリストを経てX Capital株式会社へ参画。


 モノづくり大国、日本。かつて「ジャパン・アズ・ナンバーワン」といわれたように、自動車や機械といった有形物が日本の輸出産業の礎となっていた。トヨタ自動車が長らく“日本最大の企業”の地位を維持していることが、その証左だ。

 しかし、いま変化が起きている。形のない"あるモノ"――無形物の「IP」が輸出の目玉になりつつある。

 ヒューマンメディア(東京都港区)の調査によれば、日本のコンテンツ7分野(映画、TV番組、アニメ、ゲーム、家庭用ゲーム2分野、スマホ/PCゲーム)における、2024年の海外売り上げ規模は、2023年から約4%拡大し、合計6兆円を超えた。そのうちアニメの海外売り上げは2023年比26%増の約2.2兆円と大幅に伸び、全体の拡大を支えた。

photo 2025年に香港で開催された「ちいかわ」のイベント「CHIIKAWA DAYS」。香港のクリエイティブスタジオが、ちいかわのライセンスを扱うスパイラルキュート(東京都中央区)の協力を得て開催した(写真:ゲッティイメージズ)

 6兆円の規模感をつかむ上で、鉄鋼の輸出額と比較したい。

 日本鉄鋼連盟の集計(PDF)では、2024年の鉄鋼輸出額(全鉄鋼ベース)は4兆7402億円で前年比2.1%減、2025年は3兆9299億円で前年比10.5%減となり、3年連続の減少となった。

 同じ2024年で比べても、コンテンツの海外売り上げが約6兆円なのに対し、鉄鋼は4兆7402億円。すでに1.3倍の開きがある。日本の輸出品目で無形物のIPが伸びているのだ。

photo コンテンツ7分野の海外売り上げ(出所:ヒューマンメディア「日本と世界のメディア×コンテンツ市場データベース」)

サンリオなど飛躍 “サブカル”は「モノづくり大国」の次代を担えるか

 この変化は、すでに国策のレベルに達している。経済産業省は「エンタメ・クリエイティブ産業戦略」をまとめ、コンテンツ産業の海外売上高を20兆円に拡大するための5カ年アクションプランを打ち出した。2033年までに約3倍という目標だ。かつて「サブカルチャー」にくくられていた領域が、いまや自動車産業に並ぶ扱いを受けている。

 その追い風は、業界統計にも表れている。

 日本動画協会の「アニメ産業レポート2025」によれば、2024年のアニメ産業市場の規模は3兆8407億円で、前年比14.8%増となり過去最高を更新。海外市場は2兆円を突破し、前年比126%と市場成長をけん引したという。国内市場の伸び率が102.8%とやや低調な成長率にとどまるのに対し、海外市場の伸び率は126%で全体を押し上げた構図だ。

 人口が減り、内需が細っても、世界を市場として戦えているというのが日本のコンテンツ産業の現在地だ。

日本が手にした「限界費用がかからない輸出品」

 なぜ、これほど身軽に海を越えられるのか。それは、輸出する品が「モノ」ではなく「権利」だからである。

 例えば、鉄を輸出するには、高炉を建て、原料炭と鉄鉱石を買い、製品を船に積む必要がある。関税もかかる。米国の通商政策一つで採算が揺らぐ。自動車も同じだ。工場、港、船、そして現地の販売網が要る。

 ところがアニメやキャラクターは、配信サービスに載せ、ライセンス契約を結ぶだけで国境を越える。一度作った作品を100カ国で流しても、追加の制作コストはほとんど発生しない。IPを用いてグッズ展開する場合でも、輸出相手国側に生産拠点があれば、IPを貸し出している企業目線では在庫も倉庫も要らず、輸送費も関税もほぼかからない。

 鉄は運ばなければ売れないが、権利は運ばずに売れる。

 海外市場規模が26%増という伸び方は、この身軽さの直接的な結果である。コンテンツは、日本が手にした「限界費用のかからない輸出品」なのだ。

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