通信大手のKDDI。いまでこそ日本を代表する企業となった同社も、設立当初は“小さな会社”だった。KDDIの高橋誠会長は、当時のことを次のように語る。
「約40年前、NTTしかなかったころに電気通信の自由化があり『2社目を作ろう』ということで、当時のスタートアップが集まって作ったのがKDDI(※当時は第二電電企画)です。京セラ、セコム、ソニー、ウシオ電機など、イケイケな人たちが作った会社なんです」
7月17日に開催されたスタートアップ関連イベントに、KDDIの高橋会長、オリックスの宮内義彦シニア・チェアマン(社長、会長を経て現職)、デジタル庁発足に携わった平井卓也衆議院議員が登壇した。“スタートアップ精神”で組織を発展させてきた3人の英傑たちが、その歩みと、日本企業の成長を阻む課題について語り合った。
本記事は、米国のベンチャーキャピタルであるPegasus Tech Venturesが主催した「スタートアップワールドカップ2026 東京予選」(7月17日開催)の取材を基に構成したもの。
3人が登壇したパネルディスカッションの進行は、一橋大学の米倉誠一郎名誉教授が務めた。
――KDDIはもともとスタートアップでしたよね。KDDIがなければ、電電公社だけですよ。どんなにつまらないかということを考えると、面白いですよね。高橋会長は、京セラに入社して現在に至ります。
高橋会長 私は、KDDI(※第二電電企画)が設立された1984年に、京セラに入社しました。それから3カ月で第二電電企画に出向させられ、すぐ転籍させられました。上場企業に入ったはずが、スタートアップに入った感じです。
そこから約40年がたち、KDDIはグループ会社を含めて約7万人います。スタートアップが大きくなる歴史を見てきたため、私はスタートアップが大好きです。「スタートアップファースト」の精神でやっています。
――日本の大企業から新しいものが生まれる可能性や、大企業の役割について、どうお考えですか。
高橋会長 KDDIは、設備投資に8000億円かけており、今後3年間で成長投資に1兆円をかけられます。このように大企業は大きな投資ができるため、投資の方向性を示すことが重要です。
また「大企業がスタートアップをM&Aしろ」といわれることがありますが、私は無理があると思っています。長らくメンバーシップ制でやってきた大企業と、スタートアップを一緒にしてもうまくいかない。大企業が新事業をスピンアウトして、その会社とスタートアップが一緒になって事業を拡大していく方向が正しいと思っています。
――オリックスの宮内さんは、大企業の役割についていかがでしょうか。
宮内シニア・チェアマン オリックスは、初めはベンチャービジネスでした(※編集注:当時新しかったファイナンスリースを日本に導入。設立時の社員は13人で、その中の1人が宮内シニア・チェアマンだった)。イチかバチかやってみて、何十年かしたら大企業に育ってきました。
早くからベンチャーキャピタルを設立し、自分たちの資金で運営しました。ノウハウがないので、米国サンフランシスコのベンチャーキャピタルに助けてもらい、そのときに会った米国の若い方々に勢いがあったことを覚えています。
日本では、ベンチャーを始めようと考える人が少なかった。志はあっても、バックグラウンドがないケースも多々ありました。それが最近は変わっており、ベンチャーを立ち上げる人が増えました。この傾向は素晴らしいと思っています。
――スタートアップやベンチャー企業を巡っては、さまざまな制度が整ってきています。政府も、スタートアップ数の拡大を掲げています。
平井議員 初代デジタル大臣になる前、第二次安倍内閣で科学技術担当大臣を務めました。そのときに「世界に伍するスタートアップ・エコシステムの拠点形成戦略」という政策を作り、全国で「平井ピッチ」も開催しました。
2022年から「スタートアップ育成5か年計画」が始まっており、2027年が区切りになります。この4年間で、スタートアップは2万5000社、大学発ベンチャーが5000社を超えました。しかし「ユニコーン企業100社」の予定が、8社しかありません。また、スタートアップへの投資額を10兆円にしようとしましたが、まだ8000億円です。
現在、自民党の「スタートアップ推進議員連盟」の会長を務めており、大きな政策転換を考えています。研究開発に補助金を出すだけでなく、政府調達の中に複数年度で取り入れる方針です。地方自治体でも同様に、社会課題解決型ベンチャーに、補助金ではなく仕事を発注できるように後押ししたいと考えています。スタートアップが未来を作る――そのことだけは間違いないと確信しています。
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