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孫正義は「“利益生む神の手”を持つ」 シリコンバレーにとどろく才能、米投資家が絶賛Pegasus Tech Ventures創業者インタビュー

» 2026年07月09日 07時00分 公開
[荒岡瑛一郎ITmedia]

 孫正義――誰もが知る起業家の名前だ。孫氏が投資家としての手腕を振るうソフトバンクグループ(以下、SBG)は、2026年3月期連結決算で純利益が5兆円を突破。「日本企業として史上最高益」をたたき出した。

 2024年、ITmedia ビジネスオンラインの取材に応じた米NVIDIAのジェンスン・フアンCEOは「あらゆるテクノロジー革命の世代において、孫さんほど素晴らしい判断をしてきた人はいません」と賛辞を送り、5回連続で成功をつかんだと述べた。フアンCEOは「孫さんだけが注目した」として5人の名前を挙げる(関連記事)。

  • PCのビル・ゲイツ(米Microsoft)
    ※1996年、Microsoft製OS対応ソフトの国内展開に向け、ソフトバンク社内に新部署を設置した。
  • インターネットのジェリー・ヤン(米Yahoo!)
    ※1996年、Yahoo!とソフトバンクが共同で「ヤフー株式会社」を設立。インターネット元年と位置付ける。
  • Eコマースのジャック・マー(中国のAlibaba Group Holding)
    ※2000年、Alibaba創業翌年に孫氏が出資。ピーク時の時価総額は8000億ドル台に成長した。
  • スマートフォンのスティーブ・ジョブズ(米Apple)
    ※2008年、ソフトバンクが「iPhone 3G」を国内初展開。約3年、iPhoneシリーズを独占販売した。
  • AIインフラのジェンスン・フアン(NVIDIA)
    ※2016年、NVIDIAの株を孫氏が取得。一時、NVIDIAの大株主だった。

 孫氏は、これらの企業への出資や日本進出の支援を指揮してきた。直近では、米OpenAIへの投資が生成AIブームを捉えたほか、SBGが買収した半導体設計大手の英Arm Holdingsが半導体需要を受けて急成長している。

 これまでSBGを「金の卵を生むガチョウ」に例えてきた孫は、6月のSBG株主総会で「を孫会長ではなく孫ガチョウと呼んで」と冗談を飛ばした。では、海外の投資家は、同氏をどう見ているのか。OpenAIなどに巨額を投じたベンチャーキャピタルのトップを取材すると、米シリコンバレーにおける孫氏の影響力が明らかになった。

photo 孫正義氏(編集部撮影、2018年)

本記事は、6月15日の取材に基づいています。記事内で言及のある内容や数字は、取材時点の情報です。

米投資家「リスペクトする」 孫氏のおかげで日本が目立つ

 取材に応じたのは、米Pegasus Tech Venturesを創業したアニス・ウッザマンCEOだ。同社は、OpenAI、米Anthropic、米SpaceX、米Airbnbなどのスタートアップに投資している。日本企業では、マネーフォワード、空飛ぶクルマを開発するSkyDrive、電気自動車を製造するテラモーターズなどに出資している。

 ウッザマン氏は「投資は100%うまくいくわけではないのが当たり前です。孫さんは大部分がうまくいっている」と語り、孫氏を次のように絶賛した。

 「リスペクトします。孫さんの実績があるから、海外でも日本が目立っています。特に米国の投資業界は規模が大きいですが、彼のおかげで日本の名前が響いているのは間違いありません」(ウッザマン氏)

photo アニス・ウッザマン氏(編集部撮影)

「孫正義は“利益生む神の手”を持つ」 米投資界での影響力は

 ウッザマン氏によると、米国の投資コミュニティーにおいて、SBGが運営する投資ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」(以下、SVF)から投資を受けるということは「大きなスタンプ」を得たことになるという。同氏は両手を広げて「こんなデカいスタンプですよ」と笑った。

 「“SVFのスタンプ”があると会社は成功していきます。孫さんは、触れるもの全てを成功に導く『ゴールデンタッチ』を、いろいろなところに付けてきました」(ウッザマン氏)

 ゴールデンタッチ(Golden Touch)は、ギリシア神話に由来する慣用句だ。黄金を好んだ王が、神から「触れたもの全てを黄金に変える能力」を授かる。ここから「金運がある」「金もうけの才能がある」「成功をつかむ力がある」という意味を持つようになった。

孫正義氏とイーロン・マスク氏は似た者同士?

 孫氏の成功は、強運だけではないとウッザマン氏は語った。そこには、SpaceXを率いるイーロン・マスク氏との共通点があるという。

 「投資を判断する際、起業家の『ビジョン』と『勇気』を見ています。大きなことを仕掛ける際、普通はリスクヘッジをしてしまう。マスク氏は、決済サービスの米PayPalの売却で多額の利益を得て、SpaceXを創業しました。しかしロケットの打ち上げに何回も失敗します。銀行口座に残った最後のお金で打ち上げたロケットが成功し、SpaceXのビジネスが成立しました。ギリギリのラインでやること――日本だと、孫さんがギリギリのところにいます。その位置で続けられるのは、世界でも孫さんぐらいでしょう」(ウッザマン氏)

 孫氏の立ち回り方についてもウッザマン氏は評価する。米国にAIデータセンターなどを建設する5000億ドル規模の「Stargate Project」では、米政府と緊密に連携している。ウッザマン氏は「トランプ大統領と信頼関係を結べている点は、日本にとっても有益です」と言い、日本の看板をうまく背負っているとする。

日本のスタートアップは「大きな夢を見てほしい」

 孫氏やSBG以外の国内企業も奮闘していると、ウッザマン氏は評する。「コーポレートベンチャーキャピタル」(CVC)と呼ばれる投資ファンドを設立する企業が増えており、その運用支援をPegasus Tech Venturesが手掛けるケースが多いという。

 同社は、カルビー、三菱マテリアル、日本特殊陶業などと協業している。2026年4月にはジャパネットホールディングスと共同で運用するCVCファンドを約300億円に拡大すると発表した。海外スタートアップに投資することで、AIやデータ関連の最新テクノロジーを自社事業に生かす狙いがあるという。

 「日本のCVCは良くなってきているし、企業も頑張っています。日本企業の多くは、孫さんのように英語を喋れないし、海外での投資経験もないため、これまで保守的でした。しかし『何かしなければ』『アジアでナンバーワンにならなければ』という気持ちが大きくなっているようです。高市政権の影響も大きいでしょう」(ウッザマン氏)

 同氏は、日本企業に対して「米国のスタートアップと初期段階から連携してほしい」と訴えた。特に、今後トレンドになるとみられる「フィジカルAI」を挙げて「日本はロボット分野で世界をリードしていた過去があります。フィジカルAIに積極的に関わり、再びリードしてほしい」と期待を込めた。

photo スタートアップと企業を結ぶPegasus Tech Venturesのビジネス(図版提供:Pegasus Tech Ventures)

 国内スタートアップに向けては、次のような激励のメッセージを送った。

 「日本のスタートアップ起業家は国内を中心に見ています。そこが変わるといいですね。大きな夢を見てほしい。海外の投資家を入れたり、外国人メンバーを迎えるなどグローバルに人を巻き込めば、ユニコーン企業(創業10年以内、評価額が10億ドル以上の企業)が出てくるでしょう」(ウッザマン氏)

 同氏は、日本市場が米国市場に連動して成長すると予測する。ウッザマン氏は、日本企業や国内スタートアップが飛躍することへの期待を示して、インタビューを結んだ。

【全3回】アニス・ウッザマン氏インタビュー

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「SpaceXを信じてよかった」 イーロン・マスクに巨額預けた米投資家、“成功を確信した瞬間”明かす
SpaceXが上場し、時価総額が一時世界6位に躍り出た。アニス・ウッザマン氏は「信じてよかった」と安堵(あんど)の表情を浮かべた。同氏はなぜ、SpaceXに巨額を投じたのか。


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「OpenAIの方が上」「Anthropic創業者は天才」 シリコンバレー投資家が明かすAI市場の勢力図
SpaceXが「AI企業」へと変貌している。激変するAI市場はどこへ向かうのか。OpenAIやAnthropicに投資するシリコンバレーの投資家が見解を示した。


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孫正義は「“利益生む神の手”を持つ」 米投資家が絶賛する才能と影響力とは
孫正義氏をリスペクトする――ウッザマン氏はこう語る。数々の投資を成功させてきた孫氏は、米国市場にどのような影響力を持つのか。


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