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「OpenAIの方が上」「Anthropic創業者は天才」 シリコンバレー投資家が明かすAI市場の勢力図Pegasus Tech Ventures創業者インタビュー

» 2026年07月09日 07時00分 公開
[田中圭太郎ITmedia]

 イーロン・マスク氏が率いる米SpaceX。新規株式公開(IPO)で史上最大規模の750億ドル超を調達し、時価総額は一時世界6位に浮上するなど「民間宇宙企業」として確固たる地位を築いている。

 SpaceXはいま「宇宙企業」としてだけでなく「AI企業」としても注目されている。自動運転車「Tesla」、再利用可能ロケット「Falcon 9」、衛星インターネット「Starlink」――数々のイノベーションを起こしてきたマスク氏が、SpaceXで挑むAIビジネスとは何か。

 SpaceXに加え、米OpenAI、米Anthropicに出資している米シリコンバレーの投資会社Pegasus Tech Ventures(ペガサス・テック・ベンチャーズ、以下「ペガサス」)のアニス・ウッザマン創業者兼CEOを直撃。激変するAI業界の「今」を取材した。

photo アニス・ウッザマン(Anis Uzzaman)(編集部撮影、以下同)
1975年生まれ。東京工業大学(現・東京科学大学)工学部を卒業後、オクラホマ州立大学大学院で修士、首都大学東京(現・東京都立大学)大学院で博士号を取得。米IBMを経てPegasus Tech Venturesを創業。スタートアップ・ワールドカップ創業者兼会長。投資家としての活動に加え、京都大学経営管理大学院の特命教授を務めるほか、テクノホライゾン(名古屋市)、アステリア(東京都渋谷区)などの社外取締役を歴任。著書に一橋大学名誉教授・米倉誠一郎氏との共著『シリコンバレーは日本企業を求めている』(ダイヤモンド社)、『スタートアップ・バイブル』(講談社)、『世界の投資家は、日本企業の何を見ているのか?』(KADOKAWA)など。

本記事は、6月15日の取材に基づいています。記事内で言及のある内容や数字は、取材時点の情報です。

SpaceXをAI企業に変える「第4のビジネス」とは

 ウッザマン氏が率いるペガサスは、SpaceXに数百億円を投資してきた。同社が保有する株式の価値は、SpaceXの上場によって約3000億円となった。ウッザマン氏は、SpaceXはまだまだ成長すると確信しているという。

 「SpaceXのビジネスは『ロケットの打ち上げ』『Starlink』『宇宙旅行や地球の都市間移動をするStarship』があります。この3つの中では、Starlinkが最も伸びてきています。そして、いま注目を浴びているのが、第4の有望なビジネスです」(ウッザマン氏)

 第4のビジネスが「AI」だ。マスク氏は2023年、SNS「X」の運営や、AI「Grok」を手掛ける米xAIを創業。2026年2月にSpaceXがxAIを買収し、完全子会社化した。これにより、SpaceXのビジネスにおいてAI色が強くなった。

 ペガサスは、xAIをはじめ、OpenAIやAnthropicといった複数のAI企業に投資をしている。その狙いと、AI領域におけるSpaceXのポジショニングについて、ウッザマン氏は以下のように語る。

 「実は、マスクCEOは『AIエンジンを開発する』とは言っていません。私は『AIインフラを作る』と説明を受けました。OpenAIやAnthropicは、将来的にはSpaceXに対してインフラの利用料を払う立場になるのです」(ウッザマン氏)

マスク氏の次なる計画 「確実にできると思う」

 ウッザマン氏が語る、SpaceXの次なるビジネスが「AIデータセンター」の建設だ。AIの処理に大量のデータと計算資源を使う現在、データセンターの不足が指摘されている。しかし、データセンターの新設には4つの課題――電力、水、土地、環境汚染があるとウッザマン氏は説明した。

 「マスクCEOは『宇宙にデータセンターを作ろう』と考えました。人工衛星に高性能の太陽光発電設備を設置すれば、電力を十分得られます。水は冷却に必要ですが、宇宙空間は冷たいので冷却用の液体で熱を吸収できます。土地も不要で環境汚染もありません。これでデータセンターが成立しますし、私は確実にできると思っています」(ウッザマン氏)

 マスク氏は、軌道上に最大100万基の人工衛星を打ち上げ、それらを連係させて巨大なAIコンピュータにしようとしている。壮大な計画だが、すでにStarlinkでは、約1万基の人工衛星を連携させる「衛星コンステレーション」(衛星を一体運用するシステム)を作り、地球上のどこでも利用できるインターネットインフラを実現している。

photo インタビューに応じるウッザマン氏

Anthropicと比べて「総合的にOpenAIの方が上だ」

 SpaceXは、AI領域の中でもインフラを軸にしている。では、OpenAIはどうか。ペガサスが出資したスタートアップの多くが、投資会社の米Y Combinatorの支援を受けた企業だ。OpenAIのサム・アルトマンCEOは、Y Combinatorの元代表でもあり、ウッザマン氏との関係も深いという。

 「世界で最もユーザー数が多いAIは、OpenAIの『ChatGPT』です。使っていない人は少ないですよね。米国政府とも関係が良く、(Anthropicと比べると)総合的にOpenAIの方が上だと思っています。実は、ペガサスが最も大きな額を投資しているのがOpenAIです」(ウッザマン氏)

 OpenAIの創業者には、マスク氏も名を連ねている。しかしウッザマン氏は「マスク氏は、生成AIがここまでうまくいくとは思っていなかったのではないでしょうか」と述べた。AIの開発方針を巡っても、マスク氏とOpenAIは意見が違ったようだ。OpenAIはAIの学習ソースを明かさないのに対し、xAIはソースを公開する立場を取っている。

Anthropicを創業した兄妹は「天才エンジニア」

 OpenAI出身者が設立したAnthropicについてはどうか。ペガサスは、Anthropicにも出資している。

 「AnthropicがOpenAIから独立したとき、声をかけられました。創業者のダリオ・アモデイCEOはテクノロジストで、その妹のダニエラ・アモデイ社長がビジネス面を担当しています。この兄妹は天才エンジニアで、大企業向けAIに関する深い技術を持っています。トランプ政権と対立したことで私は心配したのですが、民主党支持者やカリフォルニア州の人たちに支持されて、逆に伸びました」(ウッザマン氏)

 主要なAI企業に投資しているウッザマン氏は、各社の今後をどう見通しているのか。

 「現時点では、OpenAIとAnthropicのどちらがAI市場でナンバーワンになるのか分かりません。ただ、市場には伸びていくスペースが十分にあります。両社とも異なる分野で伸びるのではないでしょうか。SpaceXも、StarlinkとAIインフラでさらに成長します。この先も有望で、未来は明るいと思っています」(ウッザマン氏)

 AI企業に投資しているからこそ見える、3社の立ち位置や戦略が聞けた。ウッザマン氏は日本発のベンチャー企業にも投資している。第3回目の記事では、同氏が日本市場について語った内容を伝える。

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