「エンジニア1人当たりの開発量は2年前の7.6倍に達し、業務プロセスの変革により49.5万時間分の生産性向上を実現した」――8月5日に開催したメルカリの2026年6月期通期決算説明会で、同社の取締役兼代表執行役CEOの山田進太郎氏は、推進してきた「AI-Native Company」(AIネイティブカンパニー)への変革成果を提示した。
2025年6月期通期決算の説明会において「AIを全ての基盤として組織とプロダクトを抜本的に変革する」と宣言してから1年。全従業員のAIツール利用率100%を達成したことに加えて、非エンジニアを含めた独自のAIエージェント構築や、AIタスクフォースによる全業務プロセスの棚卸しなど、全社を挙げた構造改革が進んでいる。
プロダクト面でも、フリマサービス「メルカリ」における商品検索やレコメンドの精度向上、出品情報の作成をAIがサポートする「AI出品サポート」の導入などが後押しし、業績面でも3年ぶりとなる売上収益の2桁成長回帰と過去最高益の更新につなげた。
記者からの質問の中には、経営トップ自らのAIとの向き合い方や、組織全体の変革スピードに関する質問も上がり、山田CEOと同社取締役兼執行役SVP of Corporate兼CFOの江田清香氏がAI導入の実効性と手応えを語る一幕もあった。
――AIネイティブ化によって生まれた具体的な強みと、山田CEO自身のAI活用の状況やそこから得た気付きについて教えてください。
山田CEO 私自身、昔コードを書いていたこともあり、現在は業務だけでなく、プライベートで勝手にアプリを作るなどしてAIを使っています。日進月歩でできることが増えており非常にエキサイティングです。
組織のAIネイティブ化の強みは、単に開発スピードが上がるだけでなく、今までできなかった高度な検索精度や多言語対応など「質」の向上に直結する点にあります。何より大切なのは、約2000人の社員全員でAIがもたらす価値を最大化することです。個人利用から組織的なAIエージェントとの協働へシフトさせることで、大きな成果につながると確信しています。
江田CFO 開発速度の向上だけでなく、今まで試せなかった新しい機能や施策に挑戦できるという質の変革があります。また、私が管掌するコーポレート領域を含め、全社的にAIを活用することで、会社全体の生産性構造そのものが劇的に変わりつつあります。
――今後のAIネイティブ化に向けて、組織改革や働き方の進化についてはどう考えていますか。
山田CEO AIによって事業や開発のスピードが加速する中で、従来の組織構造のままではスピードを生かしきれません。そのため、日本事業のCTO(最高技術責任者)を務めていた木村(木村俊也氏)が、CHRO(最高人事責任者)兼CAIO(最高AI責任者)を兼任する体制に再編しました。人事とAIを一体で推進しています。
少人数でプロダクトの仕様策定からリリースまで一気通貫で行う「AI Pods」の標準化や、独自AIモデルの開発を進め、攻めと守りの双方でAIを基盤とした組織運営を徹底していきます。
メルカリの2026年6月期通期業績は、売上収益が2292億円(前年比19%増)、コア営業利益が441億円(同60%増)となり、期中に2度実施した上方修正後の業績予想も上回り過去最高を更新した。
主力のマーケットプレイス事業では、安心安全な取引環境の整備や「AI出品サポート」をはじめとするコア体験の強化により、通期GMV(流通取引総額)が前年比15%増と3年ぶりに2桁成長へ回帰。MAU(月間アクティブユーザー数)も2400万人を突破した。
フィンテック事業では「メルカード」の発行枚数が632万枚を突破し、コア営業利益は91億円(同103%増)となった。US事業もGMV成長率は前年比11%増となり、主要3事業全てで増収増益を達成した。
メルカリは2027年6月期の連結業績予想として、売上収益2600億〜2900億円、コア営業利益450億円以上を掲げる。中期方針最終年度に向けて、独自のショッピングエージェント開発やAI基盤の高度化を推し進める構えだ。AI活用による生産性向上とプロダクト変革を成長戦略の柱に据え、中期方針の達成を図る。
「AI活用100%」でも生産性は上がりきらない? メルカリCTOが“人事”と“AI”のトップを兼任した狙い
メルカリ、悪質な転売への対策発表 しかし「手放し歓迎ムード」にならないワケとは
メルカリ、「世界共通アプリ」開始 17兆円規模のホビー市場に照準Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング