振り返れば、この日の取材には、謎を解くヒントが4つ転がっていた。
第一に、アメックスは基本的に、初年度年会費無料の施策をやらない。他社では新規獲得の定番の手法だ。
理由を尋ねると、水村氏はこう答えた。「無料という形で入られたお客さまが、定着して使い続けるかというと非常に難しい。ある程度理解していただいた上で、きちんとお金を払って入って、試していただきたい」。
つまり年会費は、収益源である前に「ふるい」である。入り口に審査官を置かない代わりに、会費を払う気のある人だけが自分から入ってくる。
7月1日に「プラチナ・カード」をリニューアル。券面右下にある「Member Since」は、アメリカン・エキスプレスに入会した年(会員資格取得年)を表している。このカード画像だと2026年入会だ(出典:アメリカン・エキスプレス・インターナショナル)第二に、会員数を絞って希少性を守る様子がない。センチュリオンラウンジは混んでいませんか、会員が増えるほど希少性が薄れませんか、と聞くと、答えは「実際にはラウンジを増やしています」だった。
昨年7月に羽田空港に開いたラウンジは世界30カ所目。少なくともラウンジでは、希少性を会員数の制限ではなく供給の増設で守っている。ここはむしろサブスクの発想に近い。
第三に、Member Sinceである。カード券面に刻印される入会年(Member Since)のことだ。アメックスの券面には入会年が刻印され、カードを変えても引き継がれる。質疑でこの話をしてくれたのは山本氏だ。
「会員の中には、その年数にプライドを持っていらっしゃる方が結構います。券面を見せながら『私は○○年からの会員で、もう20年、30年持っているんだよ』と。カードは変わっても、アメックスのメンバーでいること自体に価値を感じていただいている」。考えてみれば、会員歴だけは後からお金で買えない。
第四に、法人カードでは会員同士をつないでいる点だ。法人カードを統括する加納伸昭・コマーシャルプロダクト副社長は、こう説明した。
「一般的なカードのビジネスモデルは、カード会社の下に会員がいる縦の関係。私たちはホストとして、会員と会員の横のつながりを支援しています」。ビジネスマッチングの登録は2万8000社。会員であることが、一種の身元保証として機能している。
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