従業員の皆さんが「あれ?」と思っている社内規定や人事制度。人事や総務など管理部門の皆さんが「こんなときどうすれば……」と迷っている制度設計や問い合わせ対応。そうした疑問を、社会保険労務士の佐藤敦規先生に聞いてみました。
佐藤敦規(さとう あつのり)
社会保険労務士。中央大学文学部卒。50歳目前で社会保険労務士試験に挑戦し合格。三井住友海上あいおい生命保険を経て、現在では社会保険労務士として活動。法人企業の助成金の申請代行や賃金制度の作成に携わっている。 社会保険労務士としての活動以外にも、セミナー活動や、「週刊現代」「マネー現代」「プレジデント」などの週刊誌やウェブメディアの記事を執筆。 著書に、『45歳以上の「普通のサラリーマン」が何が起きても70歳まで稼ぎ続けられる方法』(日本能率協会マネジメントセンター)、『リスクゼロでかしこく得する 地味なお金の増やし方』『おじさんは、地味な資格で稼いでく。』(以上、クロスメディア・パブリッシング)などがある。
Q: 当社のオフィスには個人用のロッカーがなく、コートやジャケット以外は各自のデスク下などに収納しています。先日、ある従業員から「カバンを置けるボックスなどを用意してほしい」との要望がありました。従業員からは「便利になるから」「快適になるから」といった理由で、備品を購入してほしいという要望が出てきます。会社で用意すべき備品と、個人が用意すべき備品の線引きや判断基準はどのように設定すればいいのでしょうか?
A: まず前提として、会社が用意すべき備品の範囲を定めた法律はありません。その上で一般的に考えれば、業務で使う備品は会社が用意すべきです。業務に必要なものを個人が負担するという状態には、違和感があります。判断の軸は「業務に必要かどうか」に置くのが妥当でしょう。
一方、個人の好みで追加するアイテムは、本人が用意するものと整理できます。書き味にこだわった筆記用具や、使い慣れたメモ帳などがこれに該当します。一般的なデスクワークであれば、手指の乾燥を防ぐハンドクリームのような、業務そのものには必要のないものも同様です。
今回のカバンを置くボックスは、業務に不可欠とまではいえないものです。ただ、床に置いたカバンが通路をふさいでいる、デスク周辺の整理に支障が出ているといった事情があれば、快適性だけの問題ではなくなります。業務や職場環境への影響を確認した上で判断するとよいでしょう。
実務では、会社が用意する予定の備品であっても、稟議(りんぎ)や承認に時間がかかり、社員が自分で買ってしまうこともあります。法律上の問題とは別に、業務に必要なものが適切な時期に用意されない状態が続いているのであれば、購入の手続きそのものを見直したほうがよいでしょう。
なお「業務に必要な文房具まで自腹で購入するよう求められている」と相談されることもありますが、これも直ちに法律違反とまではいえません。労働基準法では労働環境を整える義務が細かく定められているわけではないため、そのことを外部に相談しても、法的な解決には結び付きにくいのが実情です。ただし、社員に継続的な費用負担を求めるのであれば、対象や負担の方法を社内のルールとして明確にしておく必要があります。
備品を巡る要望に、一律の正解はありません。「業務に必要なものは会社が用意する」という原則を置いた上で、どこまでを快適さのための希望と捉えるかを、会社ごとに整理しておく。その基準を社内で共有しておけば、要望が出るたびに判断が揺れることも少なくなります。
経営者「昭和のように働いて」社員「休みより収入」 導入してほしい制度1位でも「週休3日」が広がらない納得の理由
「忘れないうちに送っただけ」は通用しない 業務時間外の連絡を減らすルール作り、社労士が解説Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング