リスキリングとは、Reskillingという英単語で見れば分かる通り、職業技能の再教育、再開発(reskill)を意味しています。日本では「働く人の自主的な学び直し」という個人の自己責任論やスキルアップの文脈で捉えがちですが、Reskillingは単なる学習の手段ではなく、結果につながるものである点が、大いに異なります。
つまり、リスキリングは「未来の雇用」のためのものであり「新しい価値」を生むための、企業全体の取り組みです。経営者のきちんとした「経営戦略」のもと、一部の社員ではなく、新人から経営サイドまでの全人材に対してリスキリングが行われて初めて意味を持ちます。技能だけでなく、適応力、コミュニケーション能力、さまざまな企業や人たちと協働する能力、新しい仕事を創造する能力を強化する「わが社の一員であるメンバーへの投資」です。
もともとは2019年にILO(国際労働機関)の「仕事の未来世界委員会」が公表した報告書において「現在のスキルは未来の雇用とマッチせず、新たに獲得されるスキルも迅速に陳腐化する恐れがある」と警鐘を鳴らしたことに端を発しています。
ILOは2019年6月の第108回総会で「2019年の仕事の未来に向けたILO創設100周年記念宣言」を採択し、政府や企業などが働く人たちの職業訓練に投資することを加盟国に呼びかけてきました。2013年に、英オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授らによって発表された論文「雇用の未来〜コンピュータ化によって仕事は失われるのか〜」で、20年後までに人類の仕事の約50%が人工知能ないしは機械によって代替され消滅すると予測されていたので、メディアの関心も高まりました。
さらに、世界経済フォーラムと米Boston Consulting Group(BCG)が、米国におけるリスキリングのコストは1人当たり約2万4800ドルで、社外から採用するよりコストを6分の1程度に抑えられるという報告書を出したことで、多くの企業がリスキリングを取り入れるようになったとされています。この試算にはさまざまな意見がありますが、リスキリングで社内投資した方が、社外から採用するより圧倒的に安いという点では一致しています。
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