退職する人が多いから会社が倒産したのか。会社が待遇を改善しない、あるいはできなかったから社員が辞め、その結果会社が倒産したのか──そんな議論を呼ぶ、帝国データバンクの調査が発表されました。
調査のタイトルは「従業員『退職』で倒産、5年連続で増加 過去最多ペースで推移 『賃上げできず』倒産も発生」。以下、具体的な調査結果を抜粋します。
私自身、タイトルや調査結果の冒頭で「人手不足倒産」と書かれていても、最初は特に違和感を覚えませんでした。しかし読み進めるうちに、どうも腑(ふ)に落ちない感覚が残りました。
記事内に並んでいたのは「賃上げ原資を確保できない」「ドライバーの賃上げを進められない」「待遇改善の遅れによる人材流出」といった、明確な企業側の問題です。
これは単に従業員が辞めた「退職型」という話ではなく、従業員が離れていく「流出型」、あるいは企業側の課題に焦点を当てた「経営力不足型」と解釈した方がしっくりきます。
確かに企業を取り巻く環境は過酷です。調査でも指摘されている通り、受注環境の激化や燃料費の高騰により「賃上げしたくてもできない」中小零細企業が、余力・体力を奪われているのが実態でしょう。
だからこそ、問題の所在は明らかに「経営・構造の課題」にあります。それを「従業員退職型」とひとくくりに表現することは、暗に「辞めた側に責任がある」かのような錯覚を生み、経営課題の本質を覆い隠してしまうのではないでしょうか。
以前、ある企業のトップを取材した際「従業員にアンケートしたらね、一番大切なのは良い仲間がいることだって。給料じゃないんだよ。だから賃上げしないの」と笑顔で言われ、固まったことを思い出しました。
働く人は労働力を提供する対価として賃金を得るわけですから、そこに不均衡が生じれば、良い条件の会社に移る人が増えるのは自然なこと。私たちは会社に労働力を提供しているのであって、人格を提供しているわけではない。労使とはあくまでも対等な関係です。
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