作品を無料で公開することに対して、作家はどう感じているのか。鶴我氏は「肯定的な意見が多く、読まれていないことを一番感じていたのは、作家の方々だったと気付かされました。お金のために書くというより『人に読まれて、何かを感じてもらうこと』に命を懸けている方たちなので、その機会を増やせたことは、良かったなと思っています」と話す。
紙ではできない、Webならではの表現に挑戦した小説もある。九段理江氏の『海(The Internet)』では、インターネット上のチャット画面のような吹き出しを使った会話で小説が進んでいく。小説内で掲載されている画像は、九段氏自身がAIを使って生成したものだという。九段氏は「こういう表現をずっとやってみたかった」と話していたそうだ。
こうした表現の新しさは、Webの強みだ。一方、Webならではの表現を追求しすぎると、書籍化が難しくなる場合もある。鶴我氏は「Webでの面白さだけに偏りすぎるのも良くないと思っています」と説明する。
課題は、どうやって読者を増やすかだ。現在は公式Xでの告知に加え、作家自身のSNSアカウントでも発信してもらうなど、SNSを中心に読者を呼び込んでいる。紙の文芸誌にも広告を出し、QRコードからサイトに誘導しているが「ほぼ壊滅状態で、広告としては機能していない」という。どの方法が効果的なのか、手探りで試している。
その先に見据えるのは、文学茶釜が日常の中でふと立ち寄れるような居場所になることだ。
「これだけ大変な社会の中で、小説に頼る状況は少なからずあるはずです。生きるのが大変だなと感じている人の支えになる『会社のトイレで、こっそりスマホからのぞける居場所』のような存在になりたいです」(鶴我氏)
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